本研究課題は、消化管の運動制御を担う腸管神経叢内に存在するグリア細胞(腸管グリア細胞)と神経要素との形態学的連絡に注目し、腸管神経系におけるコネクトミクスを最新電子顕微鏡Focused Ion Beam / Scanning Electron Microscopy (FIB/SEM)を用い明らかにしようとするものである。 本年度は、FIB/SEMで得た連続電顕像をもとに、シナプス小胞の存在を手掛かりにし、その周囲をセグメンテーション(区画化)することで、腸管神経におけるシナプス結合の形態の解析と周囲を取り囲む要素の形態を解析し、腸管グリア細胞の形態学的インタラクションを理解しようとする方策をとった。その結果、同一神経線維上に複数のシナプス小胞を含む膨大部が確認され、典型的なVaricosity様構造を得ることができ、その周辺から多数の近傍を通過する神経線維の存在と、細胞質の特徴から腸管グリア細胞と同定される細胞の複雑な形態が明らかになった。 従来の免疫組織化学的手法による光学顕微鏡レベルでの解析では、腸管グリア細胞の形態は、複数の細い突起を多数持った多極性の細胞であると考えられている。今回もそのようなグリア細胞の形態を得ることができたが、さらに、特にシナプス結合を取り囲むような特殊な形態をする比較的突起の少ないグリア細胞と推測される細胞の存在も明らかになった。 本研究成果については、学会発表を行った。また、前年度に本研究課題を基課題として立ち上げた国際共同研究について、本研究課題の解析を更に加速するための新しい標本作製法である高圧凍結Cryo固定法の改善を国際共同研究にてすすめ、その結果についても学会発表を行った他、現在論文に投稿中である(プレプリントリポジトリ”bioRxiv”に掲載済みであるdoi: https://doi.org/10.1101/2020.03.02.972695)。
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