研究課題/領域番号 |
17K09382
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
三島 義之 島根大学, 医学部, 助教 (30397864)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御性B細胞 / 腸内細菌 / Toll like recepter / IL-10 / 5 / 6 / 7 / 8 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の難病である。その病態に炎症を負に制御する制御性B細胞が深く関与していると報告されているが、いざヒトでの臨床応用となると、詳細な抑制機構をはじめ、まだまだエビデンスに乏しい。 そこで本研究は、それらの知見を得るため、腸内細菌による“腸管“制御性B細胞誘導の分子メカニズムと、制御性B細胞を介したIBDの病態を解析する目的で計画されたものである。 平成29年度は、B細胞のToll様受容体(TLR)発現と腸炎抑制効果の検討のため、主に野生型マウスの腸管B細胞をもちいたin vitroの実験を行った。マウス糞便から精製したLysate、あるいはLPS, flagellin, CpG-DNAなどといったリガンド刺激を野生型マウスのB細胞に与えた際に生じるIL-10産生を測定したところ、特異的細菌由来刺激によるIL-10産生能の相違を確認できた。またTLR9欠損マウスのB細胞は野生型のB細胞と比較して、IL-10産生能がCpG-DNA以外にも低応答であった。この知見をさらに深く追求し、本現象がTLR9に特異的かどうかを、今後、他のTLR欠損マウスを用いて検討する予定である。またヒトIBD患者からのB細胞を用いた検討も計画している。 このように、腸管B細胞上の特定の自然免疫シグナルの欠如がIBD発症にどのようにかかわってくるのかを評価し、最終的には、生体内での特異的細菌刺激を利用した制御性B細胞誘導を介した、安全で効果的なIBD治療法開発につなげたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度はB細胞のTLR発現と腸炎抑制効果の検討の予定であったため、まずは野生型とTLR9欠損マウスの腸管B細胞をもちいてin vitro実験を行った。結果、マウス糞便から精製したLysate、あるいはLPS, flagellin, CpG-DNAなどの特異的リガンド刺激によるB細胞のIL-10産生能は、TLR9欠損B細胞ではCpG-DNA以外にも有意に低かった。購入予定であったTLR2欠損マウス、TLR4欠損マウス、MyD88欠損マウス、IL-10欠損マウス、Rag2欠損マウスに関しては、DNA組み換え申請の承認と多種類のノックアウトマウスの購入の手続きに予想以上に長時間を要したため年度内の購入ができなかった。そのため、進捗状況は計画よりもやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、遺伝子改変マウス入手の遅延により、本研究はやや遅れていると判断したが、次年度の初めごろには入手できると考えている。そしてマウス入手が完了し、使用可能な状態となれば、予定通り計画が遂行できると考えられる。ただし、万一マウス入手が長引くようなことがあれば、先に平成31年度に予定していたヒト腸内細菌叢によるヒトBregの誘導、炎症抑制効果の検討を開始したいと考えている。 次年度は、今回の繰越額をマウスと試薬等の物品購入費に充て使用することを予定している。また情報収集と本研究の成果を発表するための国際学会の参加費用に充てる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度に予定していた遺伝子改変マウスの購入が年度内に間に合わなかったため。また、学会参加のための出張旅費も、他研究費より支出することができたため予定よりも少なくなった。
(使用計画) 次年度は、現在オーダーしているマウスが到着し次第、集中して研究をおこなう予定であり、本年度分も合わせて効率的に経費を使用していく予定である。
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