これまでの私共の研究では、MFG-E8 (Milk fat globule-Epidermal growth factor-8)がヒト大腸癌で高発現しており、癌細胞から分泌されたMFG-E8がautocrine的に癌細胞増殖を促進すること、また制御性B細胞(Breg)の機能破綻が炎症性腸疾患(IBD)の腸管炎症を誘発することを明らかとしてきたが、MFG-E8による制御性B細胞(Breg)を介した腫瘍免疫に関する機序は解明には至っていなかった。今回の申請課題で得られた知見として、MFG-E8 ノックアウト(KO)マウスではBreg数が減少し、MFG-E8 KOマウスのBregはCpG DNA刺激によるIL-10 産生能が低下しており、MFG-E8がBregの発生や分化に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。その後、MFG-E8 KOマウスの繁殖が停滞してしまったため、炎症性大腸癌(colitis-associated cancer: CAC)モデルにおける大腸発癌と癌進展抑制に関するin vivo実験では期待した成果を上げることは出来なかったが、本研究の成果として、MFG-E8によるBregの活性化や機能促進は宿主の腫瘍免疫抑制を介して大腸癌の発生・進展に影響する可能性があると考えられた。今後、腫瘍に対する免疫療法の新規開発につながる可能性があると思われた。
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