1.ヒト大腸癌オルガノイドに関する検討 20症例の大腸癌オルガノイドの樹立ならびに継代培養に成功した。がん幹細胞マーカーである、LGR5、CD133、CD44v6に対して免疫染色ならびにフローサイトメトリーを行い、発現量を評価した。発現量は個体により様々であることが確認された。また、大腸癌のキードラッグである5-FUおよびオキサリプラチンを用いて50%阻害濃度(IC50)による薬剤耐性を評価するとともに、ヌードマウスにオルガノイドを移植し、増殖能および薬剤耐性を評価した。薬剤耐性を比較した結果、IC50は大腸癌オルガノイドが大腸癌細胞株より高値であった。これは大腸癌オルガノイドが、分化した癌細胞よりも薬剤抵抗性が高いこと、つまり癌幹細胞の性質を有していることが示唆された。フローサイトメトリーの結果を照合すると、Lgr5陽性細胞陽性細胞中でCD133陽性率が高いものは薬剤感受性が高く、CD133陽性率が低いものが薬剤耐性に関わっている可能性が考えられた。この結果は他の研究機関からの臨床データとも一致した。 2.光線免疫療法について 消化管間葉系細胞であるGIST細胞株を用い、IR700-c-KIT抗体(12A8)抗体反応下に近赤外レーザーを照射したところ、照射量依存的に細胞生存率の低下を認め、100J/cm2照射で0%となった。また、Annexin V (+) 細胞の増加とcleaved PARPの発現増加を認め、アポトーシスによる細胞死が示唆された。ヌードマウス計7匹にGIST細胞を移植後、IR700-12A8を静脈投与した。続いてレーザー照射を定期的に行い、腫瘍の縮小率をコントロール群とで比較した。全治療マウスで90%以上の腫瘍縮小率が得られ,そのうち4匹では腫瘍が完全に消失した。TUNEL染色によるApoptotic Indexは,対照群 (約3%) に対して治療群 (約58%) で有意に高かった。
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