研究課題/領域番号 |
17K09386
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
直江 秀昭 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30599246)
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研究分担者 |
渡邊 丈久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20634843)
佐々木 裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70235282)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸癌発癌 |
研究実績の概要 |
Cdh1の生体での役割を検討するために、Cdh1の9つのリン酸化部位をすべて変異させたマウスを作製した。Cdh1は非リン酸化により活性化する性質があるため、ホモ変異マウスは生体すべてにおいてCdh1活性化状態にあると考えられる。また、コントロールマウスとしては、通常の野生型B6マウスでは厳密なコントロールマウスとは言えず、同じ遺伝子操作を経て作り出した野生型マウスを用意する必要があった。そして、その野生型コントロールマウスの作製にも成功した。 これらのマウスに大腸癌発癌モデルであるAOM-DSS実験を行った。すなわち発癌物質であるAOMを腹腔内投与し、その1週間後~2週間後に炎症作用のあるDSSを飲水させた。その結果、コントロールマウス、Cdh1活性型マウスともに短期間の下血が見られ、その後は一時的に減少した体重も回復し始めた。さらに10週以上の経過観察期間ののち、まずコントロールマウスについて開腹し、大腸について調べたところ、肛門に近い大腸にポリープを数個形成しており、本マウスにおいてもAOM-DSSの実験系が機能していることを確認した。現在、Cdh1ホモ活性型マウスについてはまだ経過観察期間中であり、大腸の解析ができていないが、コントロールマウスと比較すると体重減少率が大きいという結果が得られている。この結果より、コントロールよりも多くの大腸ポリープを形成している可能性が考えられる。 一方、in vitro実験では、アレイ結果に基づいてCdh1発現を変化させた大腸癌細胞株における実際のWntファミリーの発現をqPCRで解析した。古典的Wnt経路であるWnt 3A、9Aの発現が上昇していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cdh1ヘテロ変異マウスの同士の交配により、ホモ変異マウスの作製を行った。しかし、産仔が生まれる確率が低く、さらに雄のCdh1ホモ変異型マウスには妊孕性がないことが判明した。これらの解析に時間を要したが、途中からホモ変異型の雌とヘテロ変異型の雄を交配することで、ホモ変異型産仔を得る確率を上げることができた。 また、大腸癌発癌実験系であるAOM-DSSを行ったが、適切なDSS濃度を定めることに時間を要した。すなわち、一般的に用いられている2%DSSを飲水させたところ、早期にマウスが死亡し、本実験で使用するマウスにおいてはDSSの濃度が濃すぎる結果であった。その後、条件検討を行い、1.5%DSSであればマウスが死亡することなく腸炎を起こし、大腸腫瘍を形成することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
Cdh1ホモ変異型マウスと、コントロールとなるマウスを得る方法を確立したため、現在、順調に大腸癌発癌実験が進行中である。今後は、解析数を増やすことで、Cdh1の活性化が大腸癌発癌に及ぼす影響が明らかになることが予想される。 Cdh1の活性化により大腸腫瘍の発生が増加するという結果が確かになった場合、その理由を明らかにする必要がある。予備実験によりWntの関与が示唆されていることから、今後はWntの阻害剤を用いたin vitro、in vivo両方の解析を行っていく予定である。必要があれば、Cdh1ホモ変異型胎児より胎児線維芽細胞(MEF)を樹立することで、in vitroとin vivoの実験で得られた結果をつなぐ検討を進める。
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