研究課題/領域番号 |
17K09392
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
市川 尊文 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30245378)
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研究分担者 |
川島 麗 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70392389)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクアポリン / 絶食 / ムチン |
研究実績の概要 |
腸管はさまざまな外敵に常に晒された状態であり、腸管の局所環境の変化によって粘液成分の構成やバランスも共に変化し、それが病態形成や進行に影響する可能性がある。本研究は、病態経過で変動する腸管ムチンへの水分供給およびその保持機構を解明し、絶食下における水チャネルとムチンの発現および関連性について検討を行うものであり、本年は、糖鎖特異的ムチンとのアクアポリンの関連性を重点的に検証した。自由飲水および一定時間の絶食後、PGM34陽性スルホムチンは胃と回腸において杯細胞と分泌粘液に発現が見られた。なお、いずれも絶食時間の経過に伴い発現部位が管腔側に強く、空腸と大腸には発現が見られなかった。HCM31陽性シアロムチンについては胃・空腸・回腸は絶食時間の長さに関わらず発現が見られなかったが大腸は絶食時間が長くなるにつれて発現する場所が表面側へと移っていく傾向にあった 。アクアポリン分子の発現変動を免疫組織化学染色にて検討したところ、AQP3の発言は、絶食0hで空腸絨毛の上皮細胞でのみ発現が見られたが絶食16hでは空腸・回腸両方で細胞質全体に発現が見られるようになった。これより絶食時間が長くなるにつれてアクアポリンの発現が増加すると推測した。管腔内からの水分採取能が絶食により低下するため、既に体内に存在している水分を少しでも多く取り込むためにアクアポリンの発現を増やしたためと考えられる。ムチンとアクアポリン分子の発現比較を二重染色により検討したところ、共染色の結果、杯細胞にPGM34とAQP3の共局在が確認できた。特に絶食16hの時に顕著に発現していた。これより絶食時間が長くなるほど、PGM34・AQP3いずれも発現が増加することが推測され、その理由は既に体内に存在している水分を多く取り込み、保持するためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ムチン発現の検討に適した組織固定法とアクアポリン検出に適した組織固定法が異なり、二重染色の条件検討に時間を要した。しかしながら、固定時間を短縮して双方の固定液を用いることで、十分な検出が可能となり、今後は順調な進行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで生体での検討を行ってきたが、絶食ストレスや血液循環悪化因子の関与が背景にある可能性があり、ムチンとアクアポリンの直接的な関連を明らかにするため、細胞株での検討を中心に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験モデルの安定的な確立により、当初予定していたマウスの匹数を削減できたこと、および二重染色の検討時に試薬の削減と自作の染色機器の作成を試みたことによる。今後の使用計画としては、細胞培養株の購入費に充当したい。
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