研究課題/領域番号 |
17K09393
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
竹内 修 北里大学, 北里研究所病院, 部長補佐(研究) (00249997)
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研究分担者 |
小林 拓 北里大学, 北里研究所病院, 副センター長 (10424144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腸管マクロファージ / NLRP3 / IL-10 / IBD |
研究実績の概要 |
これまでの研究結果より、NLRP3分子がインフラマソームの活性化とは別に、MyD88依存的なIL-1受容体刺激伝達経路を介してNLRP分子やIL-10の発現に関与している可能性を見いだした。これらの研究結果を踏まえ、まずはCRISPER-Cas9ゲノム編集システムを利用し、マウスマクロファージ由来細胞株であるRAW264.7細胞を用いてNLRP3遺伝子をノックアウト(KO)した細胞株を作成した。このKO株を用いてNLRP3の新たな機能解析を詳細に進めることとした。 また、実際のヒトにおける炎症性腸疾患患者腸管マクロファージの炎症・非炎症部のNLRP3分子の役割を確認するため、研究分担者に協力を仰ぎ炎症性腸疾患(IBD) 患者手術適応症例を対象にして以下の実験を行った。倫理委員会承認後、手術時摘出組織一部を入手し、磁気細胞分離装置でソーティング後、粘膜固有層単核細胞中ミエロイド細胞分画からさらに CD3-CD33+炎症性マクロファージとそのcounter part 分画(CD3+CD33-)の細胞を分離した。同様の方法で非炎症部の腸管検体細胞を分離した。最後に、腸管型マクロファージ誘導機構の臨床応用に向けた礎を築くために、 腸管型(IL-10 高産生型) マクロファージの誘導を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPER-Cas9を利用したシステムによって、NLRP3が実際にノックアウトされた株は2株であった。実際に、Western blotによるタンパクの発現を確認すると、NLRP3の発現が落ちており、その後の実験に使用できることがわかった。 一方で、研究計画にあげた実際のヒト腸管における炎症・非炎症部のマクロファージの回収も順調に進んでおり、現時点でクローン病(CD)患者23例、潰瘍性大腸炎(UC)患者14例の手術検体組織を回収した。得られた組織は酵素処理による分散とPercollによる比重遠心法にて粘膜固有層単核細胞(LPMC)に分離し、LPMCの細胞数によっては、CD3-CD33+マクロファージまでソーティングしてdeep freezerにストックしてある。 また、腸管型マクロファージ誘導機構の臨床応用に向けて、まずは、ヒト単球系白血病細胞株であるTHP-1を用いてPMAとM-CSFによる分化を行い、M2型のマクロファージを作成しLPS刺激後のIL-10産生応答を観察した。 次年度は、腸管型マクロファージ誘導機構の臨床応用に向けて、ヒトLPMCのサンプルを解析し得られた結果より、腸管型マクロファージへの人工的な誘導を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作成したNLRP3 KO細胞株を用いてIL-4やIL-13で刺激を行い、M2型マクロファージへの分化を試みる。M2型マクロファージにおけるIL-10産生能を野生株と比較しNLRP3分子の関与について観察する。NLRP3は、近年核タンパクとしての働きを有する事が明らかになったため、核内への移行や転写因子としての動きに着目して腸管マクロファージからのIL-10産生機構とNLRP3の関連について明らかにする。 クローン病および潰瘍性大腸炎患者の手術適応例より入手した腸管サンプルから分離した粘膜固有層単核細胞(LPMC)を用いて、実際のNLRP3やIL-1β受容体の発現を確認し病態との関連を考察する。 また、将来の臨床応用に向けた礎となるデータを構築するため、腸管型マクロファージへの人工的な誘導を試みる。これまでの我々の研究よりマウス腸管マクロファージにはIL-1受容体の強い発現が観察されることから、ヒトにおける腸管マクロファージでの発現はどうかを前年度集めたサンプルで確認する。同時にIL-10の発現についても非炎症部と比較して確認する。またマウスと同様に発現が確認されたなら、IL-1受容体を強制的に発現させたミュータント株の作成を試み、IL-1β刺激後のIL-10の発現について観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況に伴い、必要な試薬を購入したが、残額が不足していたため、次年度使用額として繰越すこととなった。 未使用額を含む次年度助成金については、研究計画をもとに、上記試薬や必要消耗品等、主に物品費として使用予定である。
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