研究課題
研究開始当初の背景:非特異性多発性小腸潰瘍症は難病に指定されている難治性小腸潰瘍症であり、治療法は確立されておらず患者は若年から慢性貧血と低蛋白血症に悩まされ小腸切除が必要となることも多い。申請者らによりSLCO2A1遺伝子変異による常染色体劣性遺伝病であることが報告され、SLCO2A1関連腸症(chronic enteropathy associated with SLCO2A1;CEAS)という概念が詠唱された。SLCO2A1はプロスタグランジン(PG)の輸送に関与するトランスポーターのをコードする遺伝子であり、PG輸送障害が本疾患の病態であると考えられた。研究の目的:CEAS患者で報告されたSLCO2A1変異の機能的解析は行われておらず、本研究ではCEAS患者で認められた変異型SLCO2A1蛋白のPG輸送能について解析し、CEAS病態解明に繋げる。研究の方法:アフリカツメガエル卵母細胞にSLCO2A1RNA(野生型、変異型)をマイクロインジェクションにより導入しSLCO2A1蛋白を強制発現させる。放射性同位元素で標識したPGEを添加し、野生型、変異型SLCO2A1蛋白のPGE輸送能を解析した。研究成果:CEAS患者に認められたSLCO2A1遺伝子変異型のうち11変異の発現プラスミドからRNAを合成し、強制発現卵母細胞を作成しPGE2の輸送実験を行った。CEAS患者で報告されているSLCO2A1遺伝子変異のうち11変異(940+1GA、664GA、1807CT、421GT、1372GT、547GA、1647GT、97GC、770GA、830dupT、830delT)に関して実験を行い、9変異(940+1GA、664GA、1807CT、421GT、547GA、1647GT、770GA、830dupT、830delT)は完全または完全近くまで機能喪失に至っていたが、1372GTは部分的機能喪失に留まり、97GCは野生型に比べて取り込み能に差は見られないことが判明した。変異型SLCO2A1蛋白では親和性を示すKm値ではなく、時間当たりの取り込み量であるVmax値に差が生じていることも明らかとなった。
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World J Gastroenterol
巻: Apr 14;25(14): ページ: 1753-1763
10.3748/wjg.v25.i14.1753