研究課題/領域番号 |
17K09396
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
櫻井 俊治 近畿大学, 医学部, 講師 (90397539)
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研究分担者 |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス応答 / HSP27 |
研究実績の概要 |
慢性炎症に対するストレス応答が発癌の制御に重要である。ストレス応答蛋白heat shock protein (HSP) 27はp53の不活化やMycなど癌遺伝子の活性化、epithelial-mesenchymal transition (EMT)や活性酸素を制御することがわかっている。3種類の組織特異的なHsp27欠損マウスとヒト組織を用いてHSP27の炎症から発がんにおける役割を検討する。大腸癌の多くはAPCの不活化がその発癌の原因といわれている。APC不活化による大腸発癌モデルを用いた実験によりHSP27が大腸発癌に重要であることを見出した。また炎症性腸疾患は発癌リスクが高いことが報告されている。dextran sodium sulfate (DSS)経口投与+axoxymethane (AOM)腹腔内投与による炎症性発癌モデルにおいても同様の結果であった。今後腸発癌に関わるHSP27の機能解析を分子レベルで調べていく。 腸内細菌叢の異常と炎症性腸疾患および大腸発癌との関連が指摘されている。ストレス応答と腸内細菌との関連に注目して研究を進めている。膵酵素レパクレオンが慢性膵炎の治療薬として臨床で使用されているが、膵酵素の経口投与によりマウスの腸内細菌叢が変化することを報告した。16S rRNA領域を増幅し、次世代シークエンサー(NGS)を用いた腸内細菌叢解析を行った。Hsp27欠損マウスとコントロールの腸内細菌叢の比較や、大腸癌リスク因子である炎症性腸疾患患者の難治化とストレス応答蛋白の発現との関係、腸内細菌叢の相違を比較することで炎症および発癌の分子機序を現在を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類のHSP27欠損マウス; Hspb1 flox;Villin-Cre(腸上皮細胞特異的欠損マウス)、Hspb1 flox;Mx1-Cre (骨髄細胞での欠損マウス)、Hspb1 flox;Lgr5-Cre (Lgr5陽性細胞での欠損マウス)を作成し、APC欠損マウスとの交配を行った。HSP27欠損マウスにDSS+AOMを投与し大腸癌を発生させた。欠損マウスとコントロールマウスを比較することで、HSP27の大腸発癌への影響を検討した。複数の発癌モデルにおいてHSP27の発癌への影響が明らかになった。HSP27が重要な役割を果たす細胞についても重要な知見を得た。機能解析を加えてpublishする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
複数の発癌モデルにおいてHSP27欠損マウスの表現型が明らかとなった。今後、RT-PCR, Western blot, 免疫染色を用いてHSP27の機能解析を進めていく。またNGSを用いて腸内細菌叢への影響を検討し、HSP27のかかわる発癌分子機序を解明する。次に欠損マウスを用いた得られたデータをヒト組織で再現できるかどうかを検討する。ヒト大腸癌、前癌病変および炎症性腸疾患におけるストレス応答蛋白とEMT,幹細胞マーカー、MAPKなど炎症と発癌に関わる分子や腸内細菌叢との関連や再発や再燃リスクなど臨床データとの相関を検討し、HSP27の臨床的な意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度は、前年度までに用意した試薬を一部使用し実験を遂行できたため。 (使用計画)次年度は、複数の発癌モデルのマウスサンプルとヒトサンプルを用いて、HSP27の機能解析を行う。EMTや幹細胞、腸内細菌叢への影響を検討する。HSP27の大腸発癌への影響について更なる実験を加え、HSP27を標的とする新規診断および治療法の開発を目指す。
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