研究課題/領域番号 |
17K09398
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
渡邉 知佳子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 講師 (90365263)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ペプチド輸送体 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
常に外的抗原に暴露されている腸管では、有害な外的抗原を排除する免疫システムが発達している。腸管腔内から外的抗原の門戸となる腸上皮細胞において、その下流となる粘膜内の免疫担当細胞への効率的な外的抗原情報の輸送システムが想定されている。 我々は、ペプチドトランスポーターに着目した。小腸上部においては効率的なペプチドの吸収に関与しているが、大腸において、定常状態ではほとんど発現していないが、特に炎症時に発現が亢進することをLPSで炎症を惹起したマウス大腸粘膜においてウェスタンブロット法により定量的に示した。 腸炎モデルマウスの大腸の管腔内に細菌由来抗原MDPを投与し、炎症により腸上皮細胞の刷子縁側に発現が惹起さたペプチドトランスポーターが、それをとらえる様子をmulti-photon 共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムに観察した。 ひきつづき、「腸上皮細胞内のインフラマソームNLRP3」および、「好中球の腸粘膜微小血管への集積」など、腸炎パラメーターが、「MDP の腸管内腔からのとりこみ量・PepT1 発現量」と連動していることをRT-PCR法・生体顕微鏡観察により示した。なお、この反応は、ペプチドトランスポーターの競合的阻害により阻害された。また上皮細胞間隙の変化とは関係がみられなかった。 腸炎惹起動物モデルを用いた検討では、腸管上皮に炎症時に惹起されるペプチドトランスポーターは、腸管炎症制御の一部を担っている可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(1年目)基礎となる腸炎惹起動物モデルを用いた検証をほぼ完了した。 2年目以降はは慢性炎症動物モデル、ヒト炎症性腸疾患の腸粘膜へと、検討の範囲を広げて、腸管炎症を制御のターゲットとしての可能性について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
大腸慢性炎症モデルマウスの大腸におけるペプチド輸送体の発現と機能を、上記と同様の検証したうえで、PepT1 の機能を持続的に阻害することにより、大腸炎発症を制御できるのか、抗PepT1 療法応用に向けて、基礎的知見を加える。 ヒト慢性腸炎におけるペプチド輸送体の発現について、内視鏡検査で採取した大腸組織検体を用いて、検討する。臨床像や臨床経過への関与について、組織所見・炎症パラメーターの結果を合わせて解析を行う。 大腸粘膜上皮を単離培養し、炎症の有無により、菌体成分や食事抗原の輸送にペプチド輸送体がどのように関与するのか解析し、腸管炎症を制御のターゲットとしての可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は初年度であり、所属機関において会計可能な期間が7月から2月上旬の5か月半であった。研究の基礎実験を行い、蛍光標識のための試薬、腸管炎症惹起や輸送体の競合阻害の生態観察の試薬購入に使用した。 2年目(平成30年)は、平成29年の結果をもとに研究を遂行する予定である。まず、上記研究の結果について、PCRやウェスタンブロットなどの検討や、腸管上皮培養に使用する理化学消耗品(試薬)などに用いる予定である。
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