研究課題
HBV cccDNAの代謝機序の検討:これまでの検討や既知の分子として、Smc5/6、IFN-αを介したAPOBEC3AおよびLymphotoxin-βレセプター(LTBR)を介したAPOBEC3BがcccDNAの分解に関与しているとの報告があるが、その詳細な機序に関しては依然として不明のままである。その中で、Smc5/6に関してはHBx-DDB1(既にクローニング済)との共働によって分解され、その結果cccDNAからの転写が増強し、結果的にHBV複製が増強することが分かってきている。HBxはDDB1と結合することにより、E3ユビキチンライゲース機構をハイジャックし、cccDNAに抑制的に働く宿主制限因子を除去していると考えられる。我々は、各遺伝子型(Ae、Bj、C、D)のHBxをクローン化してタグ化し、DDB1と共遺伝子導入実験を行ったところ、HBVの遺伝子型にかかわらずHBxはDDB1と結合し、Smc5/6を分解していることが判明した。DDB1の領域を分割したクローンを作成し、HBxとの結合を免疫沈降法を用いて検討した。結果、DDB1内での既知のHBxと結合する領域ではなく、これまで既報にない領域内に強い結合を示すことが判明した。現在、DDB1内新規結合領域の同定と、その領域を標的としたペプチド合成を施行中である。
2: おおむね順調に進展している
現在は、HBV cccDNA代謝や転写抑制に働く宿主因子に標的を定め、その増強作用や発現上昇を促す新規化合物探索へと注力している。
こまでの検討で得られたHBV cccDNAの合成促進や合成阻害に関与する宿主因子、転写活性化促進や抑制に関与する宿主因子、代謝に促進的または阻害的に関与する宿主因子を随時クローニングし分泌型ルシフェラーゼであるガウシアルシフェラーゼをレポーターとしたハイスループットで評価可能な培養細胞システムを構築する。同システムを用いてランダム化学合成化合物ライブラリーや北大低分子化合物ライブラリーを用いて、宿主因子を増強する新規化合物の探索を行う。また同定した化合物は、HBVウイルス培養系を用いて、HBV cccDNAへの効果を検討する。さらにHBV陽性患者の肝組織を用いて、各宿主因子を免疫組織化学法、ウエスタンブロット法、RT-PCR法にて解析し、臨床病理学的特徴を解析する。
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