研究実績の概要 |
現在進行肝細胞癌に対する全身化学療法に使用されている経口キナーゼ阻害薬ソラフェニブに対する奏功症例は比較的少ないことが知られている. 有効性の改善や治療が奏功する症例を見出すことは急務である. 本研究ではソラフェニブ耐性におけるc-Jun/AP-1を中心としたシグナル伝達経路を検討することを目的とした. c-Junは肝癌細胞株におけるソラフェニブ誘導性アポトーシス抵抗性に関与していた. ソラフェニブ抵抗性に自然免疫が関与することが報告されている. レゴラフェニブはソラフェニブ治療で病勢進行後の肝細胞癌に対して二次治療薬として用いられている. レゴラフェニブが肝癌細胞のToll-like receptor (TLR)を含む自然免疫に与える影響をRT-PCRアレイを用いて網羅的に検討した. 以下のような結果が得られた. (1)レゴラフェニブ 0, 2, 5, 10および20 μMでHepG2を24時間処理するとCell Viabilityはそれぞれ 100%, 93.4%, 26.9%, 21.0%および18.5%と変化した. レゴラフェニブ 5μM以上の処理でcell viabilityの低下を認めた(P<0.05). (2) レゴラフェニブ2 μMで BTK, CXCL10, TLR2, TLR7, TLR8, LY86, IL2, IL10, IFNG, CSF2, CLECE4, IFNB1が2倍以上発現増加していた(P<0.05). (3) TNFは4.39倍発現低下していた. (4) IL6, FOS, PTGS2, TICAM2, TRAF6, NR2C2, MYD88, UBE2N, MAP2K4, CHUK, MAP3K7, MAP4K4が有意に発現低下していた(P<0.05). 我々はAP-1活性化がソラフェニブ耐性に関与していることを報告しているが, レゴラフェニブ投与でFosの抑制がみられた. レゴラフェニブはTLR下流分子の一部を抑制し, TNF, IL6等の肝癌細胞サイトカイン産生を抑制していることでソラフェニブ耐性肝癌細胞に効果を示す可能性が示唆された. レゴラフェニブは肝癌細胞TLRを含む自然免疫シグナル伝達経路に作用することを明らかにした. 分子標的薬の耐性機序に自然免疫シグナル伝達経路が関与しているものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レゴラフェニブがc-Fosの発現を抑制することを見出した. レゴラフェニブが肝癌細胞のToll-like receptor (TLR)を含む自然免疫に与える影響をRT-PCRアレイを用いて網羅的に検討した. 以下のような結果が得られた. (1)レゴラフェニブ 0, 2, 5, 10および20 μMでHepG2を24時間処理するとCell Viabilityはそれぞれ 100%, 93.4%, 26.9%, 21.0%および18.5%と変化した. レゴラフェニブ 5μM以上の処理でcell viabilityの低下を認めた(P<0.05). (2) レゴラフェニブ2 μMで BTK, CXCL10, TLR2, TLR7, TLR8, LY86, IL2, IL10, IFNG, CSF2, CLECE4, IFNB1が2倍以上発現増加していた(P<0.05). (3) TNFは4.39倍発現低下していた. (4) IL6, FOS, PTGS2, TICAM2, TRAF6, NR2C2, MYD88, UBE2N, MAP2K4, CHUK, MAP3K7, MAP4K4が有意に発現低下していた(P<0.05). この点について学会発表準備, 論文作成中である.
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