研究課題/領域番号 |
17K09407
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
井津井 康浩 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (20401341)
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研究分担者 |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30372444)
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10175127)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝線維化 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 発生・分化 / 肝前駆細胞 / 細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、これまでに確立してきた肝前駆細胞及び肝線維化研究の学術・技術基盤をもとに、(1)脂肪性肝炎様マウスモデルを用いたMatrix Metalloproteinase (MMP)-2の線維化進展における機能的意義を解明する。さらに、(2)MMP-2活性を制御するMMP-14による肝星細胞の機能調節機構及び上皮細胞との相互作用を解明する。これらの知見をもとに、(3)MMP-2及びMMP-14により調節される因子を修飾した肝星細胞の移入による線維化改善モデルを樹立し、ヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈する事を証明する研究を行い、今年度の成果として下記を得た。 MMP-2欠損マウスにコリン欠乏/メチオニン補充/高脂肪食を負荷した脂肪性肝炎様モデルにおける線維化動態の解析を行い、MMP-2欠損マウスでは、野生型マウスと比較して有意に脂肪性肝炎による線維形成が悪化すること、本機構にはTIMP1の発現亢進が関与することが示された。そのメカニズム解析としてwhole transcriptome解析を行い、数種類の発現亢進分子を発見し、その機能解析を現在行っている。 さらにMMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞の単離を行ったところ、whole transcriptome解析によってMMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞において、野生型と比較して数種類の発現低下分子を発見した。その分子の肝間葉系細胞における機能解析を現在進めている。さらに、MMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞と肝前駆細胞の共培養系を用いた上皮-間葉細胞間相互作用を検討する実験系の構築と解析を行っている。これらの検討で得られた数種類の分子について、患者由来血清サンプルにおける動態の比較解析を次年度以降に行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、(1)脂肪性肝炎様マウスモデルを用いたMatrix Metalloproteinase (MMP)-2の線維化進展における機能的意義の解明に関しては、想定通りの進捗をみせ、その内容の一部を第53回日本肝臓学会総会にて発表した。MMP-2欠損マウスでは、野生型マウスと比較して有意に脂肪性肝炎による線維形成が悪化することが示されたため、そのメカニズム解析としてwhole transcriptome解析を行うことで、さらに次年度以降の研究が進展できるものと考えている。 (2)MMP-2活性を制御するMMP-14による肝星細胞の機能調節機構及び上皮細胞との相互作用の解明に関しては、(1)と同様に想定通りの進捗をみせ、MMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞の単離系を確立できたこと、whole transcriptome解析によってMMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞において、野生型と比較して数種類の発現低下分子を発見できたことなどが今年度実績として挙がっている。MMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞と肝前駆細胞の共培養系を用いた上皮-間葉細胞間相互作用を検討する実験系の構築にも既に成功しており、さらに次年度以降の研究が進展できるものと考えている。 (3)MMP-2及びMMP-14により調節される因子を修飾した肝星細胞の移入による線維化改善モデルを樹立し、ヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈する事を証明する研究については、当初の計画でも、上記の解析結果を踏まえて、計画2年次以降より進行させる予定であった。前記の解析結果が順調に得られていることから考えても、当初の計画通りに概ね順調に進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前項に記した(1)及び(2)の研究項目に関しては、今年度の実績に基づき、さらにこれを継続して発展させて遂行する。さらに以下の内容に関して、これまでの成果を基盤に推進してゆく。 (1)脂肪性肝炎様マウスモデルを用いたMMP-2の線維化進展における機能的意義の解明:whole transcriptome解析の結果として得られた、脂肪性肝炎様モデルにおけるMMP-2欠損マウスにおける発現亢進、低下の各分子群の病態との相関解析と機能解析を行い、線維化悪化の原因となる分子機構を明らかにしてゆく。 (2)MMP-14による肝星細胞の機能調節機構及び上皮細胞との相互作用の解明:前述した対象分子群に対する阻害剤によるスクリーニング解析を経て、肝間葉系細胞に対する強制発現もしくはgene silencingによる検証実験に進む。MMP-14欠損マウス由来発生期肝間葉系細胞と肝前駆細胞の共培養系を用いた上皮-間葉細胞間相互作用を検討する実験系の構築には成功しており、上記で得られた分子群が肝前駆細胞の分化・増殖にいかなる影響を及ぼすかを本実験系を利用して検証し、さらにその分子機構を解析する。これらの検討で得られた数種類の分子について、患者由来血清サンプルにおける動態の比較解析を次年度以降に行うことを計画している。 (3)MMP-2及びMMP-14により調節される因子を修飾した肝星細胞の移入による線維化改善モデルを樹立し、ヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈する事を証明する研究:前項で確定した分子に関して、強制発現もしくはgene silencingを行う系を確立し、ヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞での機能解析へ進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 申請時に計画していた当初よりも、試薬等がより廉価で購入可能だったものがあったため。 使用計画:次年度以降に検討・解析するサンプル数・実験の種類を拡大して解析を行うため、試薬等を増量して購入する予定である。
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