研究課題
本研究は、ハイドロダイナミック遺伝子導入法(HGD)を肝癌治療に応用するための方法論、抗腫瘍効果を学術的に検証するためのステップと位置づけ、HGDパラメーターの確立、治療遺伝子の選択、効果と安全性の検証、肝癌モデル動物に対する治療効果の検証を行うことを目的としている。本年度は、肝癌を合併する硬変肝を含む病的肝臓へ安全で有効な核酸医薬送達を行うために、HGDシステムのパラメーターの最適化、さらに腫瘍特異的に増殖制御作用を有する、遺伝子治療のための候補遺伝子の検証を行った。1. HGDシステムを用いた、遺伝子導入時の時間、内圧曲線、注入量、速度などのパラメーターの最適化を行い、さらに硬変肝に対する効率的な遺伝子導入のために、HGD法と超音波を含むそのほかの非ウイルス性ベクターによる遺伝子導入法との併用などの方法論を検討している。また本研究の臨床応用に向けたステップとして新規HGDシステムの大動物における遺伝子導入効率の有用性と安全性を検証している。2. 方法論の検証と平行し、腫瘍特異的に増殖制御作用を示す治療遺伝子の選択とその有効性、安全性の評価を行っている。これまでの検証で、細胞の蛋白合成を阻害し、細胞死を誘導する遺伝子X発現プラスミドの抗細胞増殖効果、蛋白合成阻害効果がin vitroの培養細胞の実験系で示唆された。そこで、肝癌モデルマウスを作製し、in vivoで腫瘍に対する治療効果を検証中である。以上の成果は安全で再現性のある肝癌遺伝子治療法を構築するための基盤となる、と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
1. 新規HGDシステムを用いて、肝癌遺伝子治療のためのパラメーターを検証することが可能であった。2. 肝癌遺伝子治療のための候補遺伝子が検証でき、肝癌モデルマウスでの治療効果の検討が開始できた。3 研究協力者である、仁科教授、大塚正人准教授より、研究の方向性について、適切なアドバイスを得ることが可能であった。以上の点から、現時点で本研究が順調に進展していると評価した。
平成30年度は29年度の結果に基づき、HGDによる肝癌遺伝子治療のための治療遺伝子を用いた肝癌モデルに対する遺伝子治療による抗腫瘍効果、安全性を評価する。具体的には、1. 肝癌遺伝子治療のために検証を行なってきた抗腫瘍遺伝子を用いたin vivoのマウス肝癌モデルに対するHGDによる遺伝子治療効果を検証する。2. 1の結果に基づき、更なる腫瘍選択性を担保するために肝癌で発現するAFP等のプロモーターを用いた腫瘍細胞特異的治療効果の評価をin vitroの細胞増殖の検討、及びin vivoでの検証により行なう。3. 平成29年度に最適化したHGDーターによる抗腫瘍遺伝子を投与した際の正常細胞への影響を、多臓器不全の有無、生理学的変化など安全性の観点から評価する。また腫瘍特異的なプロモーターを使用した核酸医薬の安全性の評価を行う。以上の結果から、HGDによる肝癌遺伝子治療のための治療遺伝子を確立することが出来る。
当該年度で使用する抗体や条件検討の情報を、研究分担者間で緊密に共有することで、当初予算よりも抗体購入費が減じたため、次年度に繰り越して使用することとなった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (2件)
Mol Ther Nucleic Acids.
巻: 9 ページ: 80-88
10.1016/j.omtn.2017.08.009
World J Gastroenterol
巻: 23 ページ: 3797-3804
10.3748/wjg.v23.i21.3797
BMC Cancer
巻: 17 ページ: 322
10.1186/s12885-017-3320-7
Cancer Biology & Therapy
巻: 18 ページ: 79~84
10.1080/15384047.2016.1276134
Therapeutic Advances in Gastroenterology
巻: 10 ページ: 337~338
10.1177/1756283X16681710