研究課題/領域番号 |
17K09412
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
喜多村 晃一 金沢大学, 医学系, 講師 (70378892)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者は国内で110~140万人と推定されており、感染を放置すれば慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行するおそれがある。HBV持続感染では、cccDNAと呼ばれる環状ウイルスDNAが、宿主細胞の核内に維持されウイルス複製の鋳型となる。cccDNAを除去する有効な治療法は無く、B型肝炎の根治が難しい理由となっているが、現在のところcccDNAを標的とする分子機構の知見は極めて少ない。本研究では、HBV cccDNAの形成・維持に関わる新たな宿主因子の同定及び分子機構について解析を行い、B型肝炎克服への手がかりを得ることを目指している。本年度は、その酵素活性の特性からcccDNA形成に関わると推定し研究を進めたDNA修復因子FEN1について、昨年度までの研究成果を論文として報告した。また、当初計画通りの予備実験で見出した新たな候補因子について、CRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウト細胞の樹立、siRNAによるノックダウン実験、新規に確立した無細胞cccDNA形成実験系を用いて解析を行い、cccDNA形成における必要性を検討している。先のFEN1の経験から解析手法が確立され、比較的順調に研究が進行している。現在のところ、この新規因子の発現量低下に伴ってcccDNA量の特異的な低下が見られ、無細胞系においては候補の組換えタンパク質の添加がcccDNA形成に寄与していることを示す結果が得られている。さらに、一般的なDNA修復機構から類推されるFEN1関連因子との相互作用についても併せて検討を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HBV cccDNA形成に関与する因子として本研究開始時に有力候補としていたFEN1についてまとめ、論文として報告した。この過程で確立した方法論によって、新たな候補について解析を進めている。HBV産生細胞及びHBV感染細胞を用いたCRISPR-Cas9やsiRNAによるloss-of-function実験では、この候補因子がcccDNA形成に関わっている可能性が示唆された。このように本研究は当初の予定通り、複数のcccDNA形成関連因子の同定が見込まれ、順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度新たに有力候補となったcccDNA形成に関わる宿主因子についてさらに詳細な解析を進める。既報の因子との相互作用も検討する。また、cccDNAにC-to-U変換を導入すると考えられるAPOBECsと塩基除去修復因子の作用について明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に見出した新たな候補因子について、解析を重点的に行う次年度に使用することが効率的であると考えたため。次年度には消耗品購入等にあてる。
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備考 |
本年度は一部研究成果を論文としてまとめ、プレスリリースを行った。
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