研究課題
肝臓は、生体で代謝機能を担い、生命活動の維持に極めて重要な役割を担う臓器である。慢性肝疾患には、ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎等がある。これらにおいて、原因を除去できない、あるいは肝炎を有効に抑制できない場合、肝硬変状態へ進展し、様々な合併症が生じ、生活の質の低下、生命予後不良となる。生体には、さまざまな細胞へ分化する能力を有し、かつ、炎症修飾効果を有する間葉系幹細胞が存在する。脂肪組織の間質細胞には、間葉系幹細胞が豊富に含まれており、かつ比較的アクセスが容易である。そのため、間葉系幹細胞を豊富に含む脂肪組織由来間質細胞を用いる臓器再生修復治療の開発研究がさかんに行われている。これまでに、肝硬変マウスモデル、急性肝炎マウスモデルを用いて、健常マウスの死亡し組織由来間葉系幹細胞投与による肝再生修復効果を確認、報告してきた。本研究では、慢性肝疾患を有する生体から獲得される脂肪組織由来間質細胞、間葉系幹細胞の特性を解析し、幹細胞を用いる再生療法開発の基盤的知見を得ることを目的とした研究計画を立案、実施している。慢性肝疾患マウスとして、非アルコール性脂肪性肝炎マウスを作成し、経時的に、鼠径部脂肪組織間質細胞、骨髄細胞、脾細胞、および肝組織等を採取した。間葉系幹細胞抗原を含む細胞表面抗原に関する遺伝子発現を解析した。肝組織肉眼所見で、2週目より脂肪沈着の白褐色様変化を認め、12週目には線維化を示す硬化が確認された。骨髄細胞および脂肪組織由来間質細胞において、CD133は、野生型マウスと比較して、同等あるいはより亢進した発現を示した。また、脂肪組織由来間質細胞において、CD105、CD90の間葉系幹細胞抗原も同等あるいはより亢進した発現を、また、CD31抗原は、発現亢進を示した。
2: おおむね順調に進展している
非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルを作成し、経時的に脂肪組織由来間質細胞を採取、野生型マウスの脂肪組織由来間質細胞と比較して、間葉系幹細胞に関連する抗原を含む遺伝子についての発現を解析し、慢性肝疾患進展状態との関連に関する基礎的所見を獲得できた。また、骨髄細胞とも類似の結果を得られたが、CD105、CD90の発現については、脂肪組織由来間質細胞と骨髄細胞との間に発現に関する差異がある可能性が示唆された。
非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルを用いて、疾病の進展に伴う、脂肪組織由来間質細胞の、サイトカイン等炎症性メディエーターの発現の変化の有無を解析する。脂肪組織由来間質細胞に含まれる間葉系幹細胞についての、慢性肝疾患進展に伴う細胞特性の変化について、解析を実施する。疾病マウスに対する、非アルコール性脂肪性肝炎マウス由来の脂肪組織由来間質細胞の修復再生効果に関する in vivoにおける基礎的検討を実施する。
研究計画において、当該年度より継続している項目において、次年度において物品を購入していく計画としたため。計画内容に変更はなし。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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