研究課題
本年度はPBCについてウルソデオキシコール酸治療開始前の肝生検施行時に採取された保存血清を用いて36種類のサイトカイン、ケモカイン、bacterial translocationに関連するバイオマーカー、さらに保険診療では測定できないがPBCに関連する5種類の自己抗体を網羅的に測定し、PBCの病態進展(非代償期への移行、肝関連死)の予測が可能か検討を行った。多変量解析から血清可溶性CD14(sCD14)とIL-8がそれぞれ独立した予後予測因子である事が明らかとなった。カプランマイヤー解析でも高sCD14血症、高IL-8血症のPBC患者群では予後不良である事を証明した。自己抗体では高gp210抗体陽性者は予後不良であった。(Umemura T, et al. Liver International 2017)AIHについてはヨーロッパで施行されたゲノムワイド関連解析でSrc homology 2 adaptor protein 3 (SH2B3) 遺伝子のrs3184504が発症に関連することが報告された。そこで、日本人のAIHでも本遺伝子が疾患発症に関連するかAIH 158名、PBC 327名、自己免疫性膵炎 160名、健常者 325名について検討を行った。欧米で報告されているrs3184504の多型は日本人では1例も見つからなかった。しかし、rs11065984Tアリルがコントロールと比較して有意に低率であり(corrected P = 0.025)疾患抵抗性であることが判明した。さらにrs11065984Tを含む推定ハプロタイプはAIHと自己免疫性膵炎で同時に抵抗性に関与していることが明らかとなった。(Umemura T, et al. J Hum Genet 2017)
2: おおむね順調に進展している
当初の予定と比べてAIH 180名とPBC 350名、健常人325名のHLAのclass Iとclass IIのタイピングが終了して、患者60名について次世代シークエンサーによる全HLA遺伝子の6桁から8桁のタイピングが終了しているためおおむね順調であると判断した。
HLA領域のリシークエンシング解析は現在投稿準備中であるので早急に投稿を行う予定である。発見された変異について残りの検体で発見された多型・変異が病態と関連性があるか統計学的な検討を行い、確認をする予定である。T細胞受容体のレパトアについての測定方法を開発するための基礎実験を行っていく。
本年度施行したSH2B3遺伝子多型の解析が安価に行えたため。次年度のTCRのレパトア解析について次年度使用額をあてることが出来るため測定系の確立,さらに健常者全ての解析が行えるようになった。より詳細かつ正確なデータ解析が行えると考えられる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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