研究課題/領域番号 |
17K09417
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
西脇 理英 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90734202)
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研究分担者 |
高井 光治 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授 (70402196)
清水 雅仁 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90402198)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス蛋白質 / 低分子量 / 肝細胞癌 / 細胞運動 |
研究実績の概要 |
熱や化学物質をはじめとする種々のストレスに対して生体は迅速に反応し、ストレス蛋白質(HSP)と称される一群の蛋白質が誘導される。HSPは分子量が70 kDaのHSP70 (HSPA)、90 kDaのHSP90(HSPC)などと共に、分子量が10-30 kDaの一群の低分子量HSPがHSPBと総称され分類されている。HSPBのうちHSP27、HSP22、HSP20等は種々の臓器に恒常的に発現している。私共は、肝細胞癌の進行にHSP27のリン酸化レベル及びHSP20の発現レベルが逆相関することを見出し、作用機序としてこれらがERK及びAKTの細胞内情報伝達系を抑制し肝癌細胞の増殖を抑制することを既に明らかとしている。さらに、HSP20は肝癌細胞においてPI3 kinaseに結合してその活性を制御していること、リン酸化型HSP20が肝癌細胞の遊走、浸潤を抑制することを報告している。また最近、HSP22もPI3 kinaseに結合してAKTの活性を制御した結果、肝癌細胞の遊走・転移を抑制することを明らかとしている。HSPBは様々な蛋白質と複合体を形成して標的分子の機能を制御することが知られている。本研究では、肝細胞癌において発現が知られているHSPB 同士がどのように複合体ネットワークを形成して作用を発現しているのかを検討するために、HSP27、HSP22およびHSP20の相互関係に注目した。ヒト肝癌の組織標本では明らかに発現しているが、肝癌細胞株では発現がみられないHSP20を肝癌細胞HuH-7に強制発現させ、複合体形成の有無を検討したところ、HSP27はHSP22およびHSP20とそれぞれ独立して複合体を形成していることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝癌細胞においてHSPBのうちHSP20およびHSP22はそれぞれPI3Kに結合してそのシグナルを制御していることを既に明らかにしているが、今回、HSP20およびHSP22はそれぞれ独立してHSP27と複合体を形成していること、一方、HSP20とHSP22は複合体形成していないことを明らかにした。この結果から肝癌細胞内でHSPBはHSP20とHSP27の複合体及びHSP22とHSP27の複合体が独立してネットワークを形成し肝癌細胞の遊走を制御している可能性を示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
HSP20の複合体およびHSP22の複合体の肝癌細胞の遊走の制御における役割を検討し、これらの複合体ネットワークの標的分子を検討し、肝癌細胞の進展に対する制御機構の詳細を明らかにする。
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