研究課題
1. 肝移植後C型肝炎に対するインターフェロンフリー治療の効果と安全性の解析:当院にて、ダクラタスビル+アスナプレビル(15例)、ソホスブビル+レジパスビル(30例)、ソホスブビル+リバビリン(1例)によるインターフェロンフリー治療を導入した肝移植後C型肝炎症例について、治療効果と安全性を検討した。ダクラタスビル+アスナプレビル治療を導入した15例中9例(60%)でsustained virological response (SVR)を達成した。有害事象として、発熱3例、肝障害2例、振戦1例、帯状疱疹1例を認めた。ソホスブビル+レジパスビルまたはソホスブビル+リバビリンを導入した31例では、全例でSVRを達成した。有害事象として、出血性十二指腸潰瘍を2例に、肺胞出血、帯状疱疹、サイトメガロウイルス網膜炎、失神、敗血症をそれぞれ1例ずつ認めた。ダクラタスビル+アスナプレビル無効例3例、腎移植後症例2例、肺高血圧合併例、黄疸例に対しても安全に治療可能であった。2. インターフェロンフリー治療による免疫抑制剤の血中濃度変化の解析:インターフェロンフリー治療開始前後のタクロリムスならびにシクロスポリンの血中濃度の変化を経時的に解析した結果、大部分の症例で治療開始初期には血中濃度が上昇し、その後徐々に低下してくることが明らかとなった。3. インターフェロンフリー治療無効例のHCVゲノムのディープシークエンス解析:治療開始前ならびにHCV再発時の段階での血液からRNAを抽出し、ディープシークエンス解析を行った。その結果、HCVのNS3, NS5A領域に既知の薬剤耐性変異が検出された。NS5AにP32del変異を持つ症例が2例含まれていた4. 第三世代シーケンサーによるHCVゲノム配列の解析:第三世代シーケンサーを用い、長いリード長のディープシークエンス法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね研究計画通りに進展しているため。
1. 第三世代シーケンサーによるHCVゲノム配列の解析: 平成29年度から引き続き、第三世代シーケンサーを用いたHCVのディープシークエンス解析を行う。加えて、薬剤耐性HCVの発生機序を明らかにするため、治療開始前と再発時のHCV配列と比較した分子系統樹解析を行い、薬剤耐性変異の起源を解析する。2. 肝移植前後おける薬剤耐性変異HCVのダイナミクスの解析: 第三世代シーケンサーを用い、肝移植前の血清ならびに肝組織、肝移植後の再感染後、急性肝炎期、慢性肝炎期、抗HCV治療前、治療1週間後、HCV再発時、HCV再発後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年後の血清を用い、HCVゲノム配列の解析を行う。これらを経時的に比較して分子系統樹解析を行い、HCVの多様性の変化を明らかにする。薬剤耐性変異HCVの肝移植前後の経時的変化を明らかにすることにより、肝移植後の最適な治療開始時期を決定することが可能となることが期待される。3. HCVレプリコンシステムを用いた薬剤耐性メカニズムの解析: 同定された薬剤耐性変異をもつHCVの薬剤耐性メカニズムをin vitroで解析するため、HCVレプリコンシステムを用いて解析を行う。これまでの解析の結果、治療無効との関与が示唆されるHCVクローンについて、Huh7.5細胞を用いたHCVレプリコン細胞の作成を行う。さらに、薬剤耐性に関与すると予想される変異部位を野生型に変化させたレプリコン細胞や、他のクローンとのキメラ配列もつHCVによってもレプリコン細胞を作成する。これらの細胞に各DAAを加えてHCV-RNA量の変化ならびに残存したHCVの配列の変化を同定することにより、in vitroで薬剤耐性獲得機序の解析を行う。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Journal of Gastroenterology
巻: 52 ページ: 986~991
10.1007/s00535-017-1310-9
Clinical Transplantation
巻: 31 ページ: e13109~e13109
10.1111/ctr.13109
Digestion
巻: 96 ページ: 228~230
10.1159/000484237