研究課題
1. 肝移植後C型肝炎に対するインターフェロンフリー治療の効果と安全性の解析:当院における、HCV1b型に対するソホスブビル+レジパスビル12週間(31例)、グレカプレビル+ピブレンタスビル12週間(2例)、8週間(2例)、2b型に対するソホスブビル+リバビリン12週間(1例)、グレカプレビル+ピブレンタスビル12週間(1例)治療の効果と安全性を解析した。32例は生体肝移植後、5例が脳死肝移植後であり、移植から治療開始までの期間は中央値71ヶ月(4~175ヶ月)であった。12例にdirect acting antiviral(DAA)治療歴あり、10例にHCV NS5Aの耐性変異を認めた。有害事象として、出血性十二指腸潰瘍を2例に、肺胞出血、帯状疱疹、サイトメガロウイルス網膜炎、失神、敗血症、急性拒絶反応、下血をそれぞれ1例ずつ認めたが、治療中止例はなかった。37例全例でsustained virological response (SVR)を達成した。2. 第三世代シーケンサーによるHCVゲノム配列の解析:インターフェロンフリー治療無効例の治療開始前ならびにHCV再発時の段階での血液からRNAを抽出し、第三世代シーケンサーを用い、HCVゲノムの長いリード長の一分子ディープシークエンスを行った。その結果、HCVのNS3, NS5A領域の既知の薬剤耐性変異がひとつのHCVクローン上で多重変異となっていることを明らかにした。NS5AにP32del変異を持つ2症例については、遺伝子変異頻度が非常に高く、遺伝子不安定性が生じていると考えられた。3. 肝移植前後おける薬剤耐性変異HCVのダイナミクスの解析: 第三世代シーケンサーを用い、肝移植後の慢性肝炎期、インターフェロン治療前、HCV再発時、DAA治療前、HCV再々発時、HCV再発後1ヶ月の血清からRNAを抽出し、HCVゲノム配列のシークエンス準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
おおむね計画通りに進展している。
1. 第三世代シーケンサーによるHCVゲノム配列の解析: 平成30年度から引き続き、第三世代シーケンサーを用いたHCVの一分子シークエンス解析を行う。薬剤耐性HCVの発生機序を明らかにするため、治療開始前と再発時のHCV配列と比較した分子系統樹解析を行い、薬剤耐性変異の起源を解析する。2. 肝移植前後おける薬剤耐性変異HCVのダイナミクスの解析: 肝移植後の慢性肝炎期、インターフェロン治療前、HCV再発時、DAA治療前、HCV再々発時、HCV再発後1ヶ月の血清のHCVゲノム配列について、第三世代シーケンサーを用いてシークエンス解析を行う。解析結果の分子系統樹解析を行い、HCVの多様性の変化を明らかにする。薬剤耐性変異HCVの肝移植前後の経時的変化を明らかにし、肝移植後の最適な治療開始時期を決定する。3. HCVレプリコンシステムを用いた薬剤耐性メカニズムの解析: 同定された薬剤耐性変異をもつHCVの薬剤耐性メカニズムをin vitroで解析するため、HCVレプリコンシステムを用いて解析を行う。これまでの解析の結果、治療無効との関与が示唆されるHCVクローンについて、Huh7.5細胞を用いたHCVレプリコン細胞の作成を行う。さらに、薬剤耐性に関与すると予想される変異部位を野生型に変化させたレプリコン細胞や、他のクローンとのキメラ配列もつHCVによってもレプリコン細胞を作成する。これらの細胞に各DAAを加えてHCV-RNA量の変化ならびに残存したHCVの配列の変化を同定することにより、in vitroで薬剤耐性獲得機序の解析を行う
当該年度には、臨床データ解析とシークエンス結果解析が主であったため、費用が少額で施行できる研究のみであった。次年度にはシークエンス解析ならびに細胞を用いた解析を行うため、使用額が多額となる予定であり、当該年度使用額の一部を次年度使用額とした。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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