研究課題/領域番号 |
17K09422
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小玉 尚宏 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10623275)
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研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20397699)
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / CRISPR / 遺伝子スクリーニング / 脱分化 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌は世界でその死亡率が全癌種中第2位と予後不良な疾患である。早期肝癌の多くは組織学的に均一な高分化型肝癌であるが、その一部からより低分化な癌が出現し、悪性度の高い多血性の進行肝癌へと進展して、浸潤や転移を来たす。進行肝癌の治療選択肢は非常に乏しく、新たな治療薬の創出が喫緊の課題である。申請者は、In vivoにおける網羅的な癌遺伝子同定法であるトランスポゾン挿入変異スクリーニングを行い、肝癌進展のドライバー候補遺伝子を多数同定した。そこで本研究では、これら遺伝子群の肝癌進展への関与を生体内で検証し、進行肝癌における臨床的意義を明らかにする。本年度は、トランスポゾンスクリーニングにより同定された候補遺伝子を標的としたプール型CRISPR/Casライブラリーを作成した。そして、このライブラリーを、昨年度作成した肝発癌マウスモデルに対してHTVi法により導入したところ、ライブラリー導入群において有意に発癌形成の促進を認めた。また、標的遺伝子の1つを肝特異的に欠損したマウスを作成し、肝特異的Kras持続活性化マウスと交配したところ、このマウスはKras活性化単独マウスと比較して有意に腫瘍形成が促進した。また組織学的な解析から、これらのマウスでは分化度の低下した肝細胞癌が発症していることを同定した。さらに、標的遺伝子の1つを肝特異的に欠損したマウスを肝特異的Pten欠損マウスと交配したところ、このマウスはPten欠損単独マウスと比較して有意に腫瘍形成が促進した。また組織学的な解析から、これらのマウスでは分化度の低下した肝細胞癌が発症していることを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、これまで行ってきたトランスポゾン挿入変異法により同定された遺伝子群に関して、マウスモデルを用いてIn vivoでハイスループットに検証を行う系と、個別に検証を行う系の二つを同時並行で進める研究計画となっている。In vivoでの検証系に関してはマウスモデルを用いたスクリーニング実験が順調に進んでいると考える。また個別に検証を行う系に関しても、すでに一つ新規がん遺伝子に関してKOマウスによる表現系も得られており、こちらに関しても順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画はほぼ順調に進んでいるため、当初の研究計画に大きな変更無く、今後の研究推進を進めていけると考える。具体的には、ハイスループットに検証を行う系においてはスクリーニングを行った腫瘍のエキソームシーケンスを行い、発癌促進に寄与した遺伝子を同定する。また個別に検証を行う系においては同定した新しいがん遺伝子に関してその機能検証をさらに進めていく予定である。
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