研究課題/領域番号 |
17K09423
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
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研究分担者 |
阪森 亮太郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10644685)
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20397699)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞死 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアを介したアポトーシス経路が活性化すると、アポトーシスの誘導に重要であるcytochrome cだけでなく、ミトコンドリアDNA(mtDNA)が細胞質に放出される。マウス肝細胞株(CL2)にsiRNAを用いてDNase IIをノックダウン(KD)しDNase II酵素活性を抑制したところ、細胞質分画中のmtDNA量は変化しなかった。一方でABT-737(Bcl-xL阻害剤:アポトーシス誘導剤)を添加しミトコンドリアを介したアポトーシスを誘導したところ、コントロール(Cont)群に比して細胞質分画中のmtDNA量は有意に増加した。この際DNase II KD群ではCont群に比してアポトーシスは増加を認めなったが、IFN-βの発現が有意に上昇し、非アポトーシス細胞死の指標であるPropidium Iodide(PI)陽性細胞が有意に増加した。野生型マウスに8ヶ月間高脂肪食(HFD)を摂取させると、通常食に比してDNase II酵素活性が低下し、肝細胞アポトーシスの指標であるcleaved-caspase-3陽性肝細胞やTUNEL陽性肝細胞と同時にPI陽性肝細胞を認めた。DNase II酵素活性の低下が脂肪性肝疾患へ与える影響を検討するため、肝細胞特異的DNase II欠損マウス(DNase II KO)を作成した。このマウスは生理的条件下では表現型を示さなかった。HFD摂取により野生型マウスに比してDNase II KOマウスではcleaved-caspase-3陽性肝細胞やTUNEL陽性肝細胞数には変化を認めなった。一方肝内のPI陽性細胞数の更なる増加、血清ALT値の有意な上昇を認めた。脂肪性肝疾患における肝細胞DNase IIの活性低下が、非アポトーシス細胞死の誘導による肝障害の増悪を誘発している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたin vitroの実験は順調に進行しており、引き続き認められている非アポトーシス細胞死の分子生物学的特徴について検討を進めているところである。また、実験使用する予定のマウスの作成はすでに終了しており、予定している実験もすべてデータ解析の段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り順調に進行しており、計画書に準じて研究を進めていく。特に細胞死の形態の分子生物学的な特徴について検討を進める。具体的にはnecroptosisに関連するタンパク質p-MLKL, RIP1, RIP3などの蛋白発現の解析と同時にRIP1やRIP3などの阻害剤を用いた実験を行い、細胞死の形態の特徴を確認していく方針である。さらに、in vivoでも並行して同様の検討を行い、in vivoでもin vitroと同様の細胞死が起こっているかのvalidationを行うと同時に、認められている非アポトーシス細胞死の臨床的意義についての検討を行う。
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