研究課題
マウス肝細胞株であるCL2細胞にBad mimeticを添加し、Bak/Baxを活性化させると、細胞質中のミトコンドリアDNA(mtDNA)量は増加した。DNase IIを抑制下では細胞質中のmtDNA量はさらに増加した。またDNase IIの抑制は、CL2細胞のアポトーシスを増加させなかったが、IFN-βの発現上昇とともにPI陽性細胞の増加を認め、非アポトーシス型細胞死を誘導した。DNase II抑制で認められたIFN-βの発現上昇、PI陽性細胞の増加は共にカスパーゼ阻害剤で抑制されたが、TLR9阻害剤でも抑制された。またこの非アポトーシス型細胞死はRIP1阻害剤の投与でも抑制された。持続的にBak/Baxが活性化している肝細胞特異的Mcl-1欠損(Mcl-1 KO)マウスに、DNase IIをさらに欠損させると、細胞質中のmtDNA量が増加し、肝臓でのIFN-β発現上昇、PI陽性細胞の増加と血清ALT値の上昇を認めた。Mcl-1/DNase IIダブル KOマウスとMcl-1 KOマウスとでは、肝細胞アポトーシスに差を認めなかった。Mcl-1/DNaseIIダブル KOマウスにTLR9阻害剤を投与すると、血清ALT値は改善し、肝臓でのIFN-βの発現上昇は抑制され、PI陽性細胞の増加も抑制された。野生型マウスに高脂肪食摂取させると肝臓におけるDNase II活性は低下した。肝細胞特異的DNase II欠損マウスに高脂肪食摂取負荷をおこなったところ、野生型マウスに比して肝臓でのIFN-βの発現上昇を認めた。また、PI陽性細胞の増加と血清ALT値の上昇を認め、肝線維化の進展を認めた。以上より、高脂肪摂取は肝細胞DNase IIを低下させ、Bak/Bax活性化によりアポトーシスだけでなく非アポトーシス型細胞死を誘導し、肝障害の増悪及び肝線維化の進展に寄与する。
2: おおむね順調に進展している
すでにBak/Bax活性化によりミトコンドリアから放出されるミトコンドリアDNA分解不全は、非アポトーシス型の細胞死が誘導されることを明らかにできた。また、この経路が非アルコール性脂肪性肝疾患の進展に関与している可能性が示唆された。これらのことから、現在までの本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
上記の通り順調に進行しており、計画書に準じて研究を進めていく。特にミトコンドリアDNAをTLR9が認識して、非アポトーシス細胞死を惹起する機序のほかに、cGAS/STINGによるDNA感知機構の関与がないかを検討する。また、オートファジー抑制によるミトコンドリア処理機構不全の影響などの解析も併せて進めていく。さらに非アルコール性脂肪性肝疾患の肝組織検体を用いて、DNaseII活性の測定を行う。
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Cell Death Differ.
巻: 26 ページ: 470-486
doi: 10.1038/s41418-018-0131-6.