研究課題/領域番号 |
17K09426
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
相方 浩 広島大学, 病院(医), 講師 (30403512)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、糖尿病患者における肝発癌高リスク群の囲い込み、肝癌の早期発見のための非侵襲的なバイオマーカーの確立を目指すことであり、そのバイオマーカーとして、非侵襲的かつ体液中でも安定している、血清中のエキソソームに内包されているnon-coding RNA(ncRNA)に着目した。 平成29年度は、血清、肝切除組織検体の収集と臨床情報データベースの構築、およびncRNAプロファイリングの評価を試みた。これまで、当科で診療を行った非 B 非 C 肝癌症例の臨床データの収集と背景因子について解析を行った。また、そのうち、肝切除例における臨床的因子と病理学的因子の解析を行った。さらに、これらの症例の血清および切除組織から得た凍結保存サンプルと臨床病理データからデータベースを作成した。また、次世代シークエンサーを用いた RNAseq による解析を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.まず、これまで当科で診療を行った肝癌症例の背景因子について解析し、データベースを作成した。1992年1月から2017年12月まで当科で診断加療を行った肝癌2574例中、非B非C肝癌561例(22%)、B型肝癌423例(16%)、C型肝癌1558例(61%)、B+C型肝癌32例(1%)であった。このうち、非B非C肝癌では,糖尿病294例(52%)、高血圧252例(53%)、高脂血症129例(23%)などの生活習慣病を合併していた。 2.非B非C肝癌の肝切除例196例における病理学的検討では、NASH28例(14%)、多飲者61例(31%)、これらを除いた成因不明は107例(55%)であった.特に成因不明例は、年齢中央値72歳と高齢で、糖尿病合併は61例(59%)、HBc抗体陽性は46例(43%)であった。病理学的検討として、肝線維化評価では、NASH群、多飲群に対し、成因不明群の線維化進展は有意に軽度であった(NASH vs 成因不明P=0.0004)。さらに脂肪肝合併率は、NASH群32%、多飲群44%に対し、成因不明群24%であり、成因不明群では脂肪肝合併が有意に低値であった.(NASH vs 成因不明P<0.001).また糖尿病やHBc抗体を有さない症例は28%であり、背景肝は83%が正常肝であった。これら切除症例の保存血清、組織サンプルを確認した。 3.上記の糖尿病を背景に持つ非 B 非 C 肝癌根治切除症例と,背景をマッチさせた肝発癌既往のない糖尿病症例のncRNAのプロファイリングを比較し,候補となるncRNAの選り出しを行っている。まだ、条件設定などの予備実験段階であり、現時点で、結果は出ていないが、引き続き、症例の収集と解析をすすめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
非B非C肝癌症例について、肝切除症例は根治術前後の比較も行い,その後,validation setでの検証を経て,in vitro,in vivoでの機能解析を行う予定である. さらなる検体の収集に努め、また、臨床情報のデータベースの構築を行う。 具体的な対象と方法は、1)糖尿病合併非 B 非 C 肝癌根治切除症例の術前血清 2) 1)の術後血清3) 肝発癌歴のない糖尿病患者血清(年齢、性別、糖尿のステージ・重症度、その他の代謝性疾患、肝臓の血液・病理、服薬、喫煙、飲酒等の背景を 1)2)とマッチさせる)のすでに保存している検体から、1)から 3)の 3 群、各 30 例のエキソソーム ncRNA の発現パターンについて、次世代シークエンサーを用いた RNAseq により解析し比較を行う。 対象1)と 2)の間で有意な変化を認めた ncRNA は担癌状態による ncRNA の変化を、対象2)と 3)の間で有意な変化を認めた ncRNA は、carcinogenesis に関連する ncRNA の変化を反映しているものと考えられる。前者は腫瘍マーカー、後者は発癌高リスク群囲い込みのマーカーと想定される。糖尿病合併非 B 非 C 肝癌の腫瘍マーカーおよび発癌高リスク群囲い込みに資するエキソソーム ncRNAの候補を抽出し、validation setでの交叉検証を行う。
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