研究課題
本研究の目的は、糖尿病患者における肝発癌高リスク群の囲い込み、肝癌の早期発見のための非侵襲的バイオマーカーの確立である。臨床疫学的因子に加え、血清中のエキソソームに内包されるnon-coding RNA(ncRNA)に着目して研究を行った。平成29年度は、まず非 B 非 C 肝癌(NBNC-HCC)症例の血清、肝切除組織検体の収集と臨床情報データベースの構築に着手した。並行して、ncRNAプロファイリングを行うための予備実験を行った。血清中から効率的にエキソソームを回収するため、超遠心法、磁気ビーズを用いた免疫沈降法、カラム吸着法などについて検討した。平成30年度は、糖尿病合併NBNC-HCC患者の背景肝組織を検討した結果、肝硬変例のみならず、肝線維化非進展例も多く存在することが明らかとなった。また、BMI25を超える軽度肥満者が多いことも明らかとなり、学会で報告した。一方、エキソソーム回収法については、その純度についてウェスタンブロッティングなどで品質評価が可能であることなどから、免疫沈降法を採用した。粒子径のみでなく、テトラスパニンファミリーに代表される表面抗原をエキソソームマーカーと定義することで、正確な特徴付けが可能となった。平成31年度は、年々増加傾向にあるNBNC-HCCの約6割が成因不明であること、これらのうち約8割が肝硬変に至る前に発癌していることを明らかにし、さらに、FIB-4 indexが肝癌スクリーニングのバイオマーカーとなり得る可能性を示し、学会発表を行った。当該症例の血清から回収されたエキソソームを用いて、次世代シークエンサーによるRNA-Seqを試みた。現在、得られたデータを用いて、データクリーニングおよびncRNA解析プラットフォームの確立を進めているところである。今後、バイオマーカーとなり得るncRNAプロファイルを明らかにしていきたい。
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doi: 10.1172/JCI135616.
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