研究課題
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)は、肝臓を含む各種臓器の再生療法における有望な細胞源として期待されており、その臨床応用も広く進められている。これまで我々が実施している非代償性肝硬変症に対する自己骨髄細胞を用いた再生療法(先進医療B「自己骨髄細胞投与療法」と臨床研究「培養自己骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いた低侵襲肝臓再生療法」)の知見から、さらに治療効果と安全性を高めた肝臓再生療法を開発するには「高機能・高品質な骨髄MSC」の新規培養法の開発が必要であると考えた。そこで今回、骨髄微小環境に着目して「培養骨髄MSCの幹細胞性」を維持するべく、全骨髄細胞を活用した新規調整培地を作成し、これを用いた骨髄MSC培養法の有効性を評価した。その結果、この新規調整培地は培養骨髄MSCの細胞形態の変容や増殖能の低下を抑制するとともに、ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)活性を抑制し、OXPHOS抑制因子であるhypoxia-inducible factor 1-alpha(HIF-1α)やSirtuin 3、4、5(Sirt3、Sirt4、Sirt5)のmRNA発現を亢進させた。また培養骨髄MSCのTNF-stimulated gene 6(TSG-6)産生能を亢進させるとともに、肝硬変モデル動物への投与実験で肝線維化を改善させることを確認した。さらに新規調整培地から20~220nmの粒子を除去すると、これらの効果は減弱した。以上のように我々は、骨髄由来の液性因子を活用した新規培養法を開発し、この培養法は肝再生療法に用いる骨髄MSCの品質を向上させることを確認し論文報告した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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