研究実績の概要 |
肝細胞癌摘出時の癌部・非癌部組織 103症例分よりmRNAを抽出し、糖・脂質代謝関連遺伝子の発現を解析を行っている。 先行的な解析にて肝細胞癌組織においては背景肝と比較して、GK (glucokinase), PKM2 (pyruvate kinase M2 isoform), G6PD (glucose-6-phosphate dehydrogenase)等の解糖系やペントースリン酸回路系酵素の発現が亢進し、PDH (pyruvate dehydrogenase), Aconitase等のクエン酸回路やCPT1a (carnitine palmitoyltransferase 1a), LCAD (long chain acyl-coA dehydrogenase), HADHα (hydroxyacyl-CoA dehydrogenase α)等の脂肪酸β酸化に関与する酵素の発現の低下が見られ、肝細胞癌組織においてもWarburg effectが生じている事が示唆された。また、FAS (fatty acid synthase)やCD36等の脂肪酸合成や取り込み、DGAT1 (diacylglycerol acyltransferase 1)等中性脂肪合成に関与する酵素の発現も増加していた。 肝細胞癌の分化度毎に上記糖・脂質代謝関連遺伝子の発現を比較したところ、高分化肝細胞癌では脂肪酸合成や取り込み、中性脂肪合成に関与する酵素の発現が増加していた。低分化肝細胞癌においては高分化肝細胞癌において亢進していた脂肪酸合成や脂肪酸取り込みに関わる遺伝子の発現が抑制されていた。また肝細胞癌の分化度が低下するに従い、解糖系やペントースリン酸回路系酵素の発現はより増加し、一方でクエン酸回路や脂肪酸β酸化系酵素の発現は更に低下しており、より強いWarburg effectが生じていた。
|