研究実績の概要 |
肝細胞癌組織においてGK (glucokinase), PKM2 (pyruvate kinase M2 isoform)等の解糖系酵素やG6PD (glucose-6-phosphate dehydrogenase)等のペントースリン酸回路系酵素の発現が亢進し、PDH (pyruvate dehydrogenase), Aconitase等のクエン酸回路に関与する遺伝子発現やCPT1a (carnitine palmitoyltransferase 1a), LCAD (long chain acyl-coA dehydrogenase), HADHα (hydroxyacyl-CoA dehydrogenase α)等の脂肪酸β酸化系酵素の発現が低下しており、肝細胞癌組織においてもWarburg effectが生じていると考えられた。肝細胞癌の分化度毎にこれら遺伝子発現を比較したところ、高分化肝細胞癌では脂肪酸合成や取り込み、中性脂肪合成に関与する酵素の発現が増加しており、低分化肝細胞癌においてはこれらの遺伝子発現が顕著に抑制されており、このことが肝細胞癌における脂肪滴蓄積と消失の原因と考えられた。また肝細胞癌の分化度が低下するに従い解糖系やペントースリン酸回路系酵素の発現は有意に増加し、一方でクエン酸回路や脂肪酸β酸化に関わる酵素群の発現は低下しており、より強いWarburg effectが認められた。背景肝組織においても、この様な糖質・脂質代謝の変化は生じており、慢性肝炎、肝硬変と変化するにつれ顕著となっていた。この糖質・脂質代謝に関わる遺伝子発現変化はNASH発癌モデルマウスにおいても確認され、メタボローム解析でも解糖系代謝物やNADHの変化など解糖系の亢進が確認された。
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