研究実績の概要 |
本研究は分子標的薬の薬剤耐性機序を明らかにすることを目的として実施している。ヒト肝細胞癌におけるHIF1-α、PD-L1発現, ならびに腫瘍周囲浸潤リンパ球の検討として、まず肝細胞癌臨床検体を用いて免疫染色法により、HIF1-αの発現を検討した。さらに癌分化度やステージによる違いについて検討した。続いて、同様な肝細胞癌の臨床検体を用いて、RNAを抽出した後に、PDL1の発現をRT-PCRで解析。さらにWestern BlotにてPDL1の発現を解析した。さらに抗CD 4、抗CD8、抗Foxp3抗体、抗PD-1抗体を用いて腫瘍周囲浸潤リンパ球のphenotypeを検討した。In vitro実験としてはHIF1-αによるPD-L1発現誘導機序解明を目的に研究を行い、まず複数の肝癌細胞株(HepG2, Hep3B, HLF, HuH7, PLC/PRF/5)を用いて、HIF1αの発現をwestern blot法にて検討した。HIF1αの発現している肝癌細胞株に対して、複数のサイトカインを添付し、PDL1の発現の変化を検討した。さらにTLR2, TLR4, TLR9 agonistsを添加し、その後、PD-L1の発現がどう変化するかRT-PCR法にて解析した。HIF1αの発現弱い肝癌細胞株に、HIF1-α発現プラスミドをtransfectionし、その後のPD-L1発現をRT-PCR法およびwestern blot法にて検討した。予定した経過の半分程度であるが、現在は勤務状況や研究体制が変更となり、順調に研究が進んできている状態であり、この結果を踏まえて今後vivo実験を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
HIF1-α発現増強と腫瘍進展ならびに浸潤リンパ球に及ぼす検討(in vivo) (a) HIF1-α発現プラスミドが導入された肝癌細胞株、非導入細胞株、HIF1-αshRNA導入された肝癌細胞株、各 々1×106cellsをヌードマウスに移植する。その後、GFPマウスの脾臓からCD4, CD8陽性T細胞をMACSにて単離し 、各細胞を尾静脈から投与する。リンパ球移入後、3、7、14日後にマウスを屠殺し、移植された腫瘍の大きさ、 腫瘍におけるPD-L1の発現、ならびに腫瘍周囲のリンパ球浸潤のphenotypeについて、免疫染色法ならびにフロー サイトメトリーを用いて検討する。(b) ソラフェニブ50mg/kgをC57BL/6マウスにゾンデを用いて14日間経口投与 する。投与1、3、7、14日後に、骨髄および脾臓の免疫染色を行いPD-L1の発現を評価。さらに各々からリンパ球 を採取し、フローサイトメトリーを用いてPD-L1発現状態を確認する。(c) ヌードマウスに肝癌細胞株を移植す ると同時にGFPマウスの脾臓から採取したCD4, CD8陽性T細胞(1×106cells)を尾静脈から投与する。その後、 ソラフェニブを14日間経口投与し、ソラフェニブ濃度と末梢血のFoxp3陽性T細胞数の変化について検討する。また、その際の腫瘍におけるPD-L1発現について免疫染色法を用いて検討する。
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