肝細胞癌においてHIF1αが直接PDL1のタンパク発現に関わることは今までの実験により否定的と考え、サイトカインを介した間接的な影響を検討することとし、PDL1の発現を亢進すると報告されているIFNγに注目した。まず、HuH7、HLF、Hep3BにIFNγ20ng/mlを添加し24時間培養したところ、RT-PCRおよびウエスタンブロット法でPDL1の発現亢進を認めた。次にコバルトを添加し同様の検討を行ったところ、PDL1発現がコバルト添加しない場合に比較しさらに亢進されることが分かった。レセプター発現の変化を検討するため通常酸素下と低酸素チャンバー下でHuH7およびHLFを24時間培養し、RT-PCRにてIFNγレセプター1およびIFNγレセプター2の発現を検討した。すると、いずれの細胞株においても低酸素チャンバー下でIFNγレセプター1発現が亢進し、レセプター2が発現低下していた。48時間、72時間と培養時間を増やしてさらに検討したところ、レセプター1は時間依存性に発現が亢進し、レセプター2は時間依存性に低下を認めた。以上より、低酸素が肝癌細胞株においてIFNγレセプター1が発現亢進に関わることが判明し、実際IFNγを添加することでPDL1の発癌が亢進され、さらにコバルトを使うとPDL1発現が増強する結果から、低酸素が何らかの間接的な影響でIFNγが産生され、肝細胞癌株に影響するとPDL1の発現が亢進し、腫瘍免疫回避に働いている可能性が考えられた。今後、間接的な作用についてさらなる研究を進めていきたいと考えている。
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