申請者が本研究を立案するきっかけとなった先行研究の結果(Matsuura et al. Hepatology 2016)について、本邦の複数のC型慢性肝炎コホートから肝生検時の保存血清検体および臨床情報を収集し、末梢血let-7 レベルと肝線維化進展度との相関の再現性を検証した。その結果、血清および血清由来の細胞外小胞中のlet-7aの発現は肝線維化の進展に伴い減少することを再現した。さらに、血清中のlet-7発現レベルは他の線維化マーカーと良好な相関をみとめた(Matsuura etal. Open Forum Infct Dis. 2018)。 また、治療によりC型肝炎ウイルスの排除された患者の保存血清を用いて、その後の肝線維化・予備能の改善・悪化に関連するケモカイン/サイトカインの解析を進め、候補となるタンパクを見出した。別コホート検体による再現性の検証を行い、論文1編がアクセプトされ、追加1編を投稿中である。 また、この検体を用いて血清中由来の細胞外小胞中のmiRNAの網羅的発現解析(マイクロアレイおよびRNA-seqによる)を行い、候補となる複数のmiRNAを見出し、別コホートで検証中である。一方、細胞内におけるlet-7の働きについて、ヒト肝星細胞株(LX-2)、線維芽細胞株を用いて検討した。LX-2をいくつかのサイトカインを加え活性化するとlet-7の発現レベルは有意に低下した。また、let-7をLX-2に導入後の肝線維化関連の遺伝子発現を解析したところ、肝線維化を抑制する傾向をみとめた。
|