研究課題/領域番号 |
17K09437
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤井 英樹 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (20382070)
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研究分担者 |
松原 三佐子 (佐藤) 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (00635120)
LE THUY 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (10572175)
松原 勤 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20628698)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血小板 / 赤血球 / 加齢 |
研究実績の概要 |
本研究は①マウス脂肪肝炎モデル、②ヒト肝生検病理組織の赤血球、血小板の役割を形態学的に解析し、「非アルコール性脂肪肝炎における肝臓内の炎症形成に赤血球、血小板による血栓形成が関与する」という仮説を証明することを目的として立案した。2018年度の研究実績を報告する。①8週齢(若年群)および65週齢(加齢群)の雄性C57BL/6マウスに通常食(ND)および高脂肪高コレステロール(HFHC)食を6ないし16週間摂餌させた。加齢HFHC6週投与群でNASは2.3±0.9に、HFHC16週投与で更に4.2±0.9に有意に上昇した。特に加齢HFHC16週投与群で肝細胞の風船化が著明だった(1.7±0.5)。血中Mac2bpは加齢HFHC6週群で499±61 ng/mL、加齢HFHC16週群で712±195 ng/mLに有意に上昇した。また、ALT値は加齢HFHC16週投与群で98±41 U/Lに有意に上昇した。加齢HFHC16週投与群では、肝線維化関連遺伝子であるTGF-beta1、Col1a1、Col1a2のmRNA発現量は若年ND6週投与群に比しそれぞれ1.9倍、22.9倍、18.9倍に有意に上昇した。更に、SirtuinファミリーのSirt1、Sirt2、Sirt3、Sirt7の肝内mRNA発現量は若年群HFHC6週群でND6週群に比しそれぞれ49%、44%、43%、50%低下し、加齢群HFHC16週投与ではND16週群に比しそれぞれ38%、40%、66%、61%低下した。Sirt3のみが他のSirtuinと挙動が異なり、若年ND6週群に比し加齢ND16週投与群でSirt3 mRNA発現量は17%有意に低下していた。②昨年度に引き続き、再度ヒトNASHの肝組織の電子顕微鏡観察を詳細に行ったが、血小板血栓は病態に影響を与えるほど著明にみられる現象ではないとの結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①マウス脂肪肝炎モデルは予備検討で電子顕微鏡による観察を行ったが、明らかな赤血球血栓や血小板血栓を認めなかった。また、DOAC投与群を作成したがNASHを抑制することは出来なかった。一方、マウス脂肪肝炎モデルは加齢による肝線維化の進展が示唆されており、現在その原因を解析中である。 ②ヒト検体の詳細な検討の結果から、NASHの病態解明の過程で赤血球血栓や血小板血栓に拘泥しすぎない方がよいと考えた。組織検討の段階で、NASHの肝線維化進展がa) 中心静脈から、b)zone2から、c) 門脈周囲からに分けられるという既知の情報に加え、当院で肝生検を施行した症例をこの3つに再度分類し、背景の病態の違いが無いかを検討する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①2019年4月17日現在、検討に必要なマウスのグループ作成は終了しており、一気に解析を進める予定である。 ②Sirtuinはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド依存性の脱アセチル(アシル)化酵素であり、代謝をはじめ老化、発癌、ストレス応答など多様な生物学的作用において重要な役割を有する。Sirtuin 3はミトコンドリアに局在し、細胞内のエネルギー代謝を制御している。近年、日本人肝線維化進行NASH患者において肝内mRNA発現量が有意に1.38倍低下したと報告された(Hepatol Res 2017;47:1445)。Sirtuinファミリーが肝線維化に与える影響を明らかにしたい。 ③一方、加齢と肝線維化に関与する新規物質を探索する目的でマイクロアレイを用いて、加齢で肝線維化が進展した時に発現量が変動する遺伝子を網羅的にスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主にvivoのマウスモデル作成に費やした。最終年度にはマイクロアレイ等が控えており、予算をこちらに集中させる予定である
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