研究課題
今年度は昨年度の研究をさらに発展させ、腸内細菌と肝線維化に関する検討課題においても大きな成果を得た。今年度は昨年度の基礎的検討に加えて、難吸収性抗菌薬のリファキシミン(Rfx)を用いて、Rfxによる肝硬変 (LC)の病態改善効果について腸内細菌制御を中心に臨床的に解析した。ミニマル脳症を含む肝性脳症合併LC患者に4週間Rfxを投与し前後での血中アンモニア(NH3)、Etおよび炎症性サイトカインの変化について検討した。血中Et測定はEAA(Endotoxin Activity Assay)を用いて測定した。さらに糞便中の腸内細菌叢の変化を16S rRNAシーケンスを用いて解析した。その結果、Rfx投与により血清NH3値の低下と共に、ナンバーコネクションテスト(NC)も改善した。またEAAもRfx投与により有意に低下し、投与前後のEAとNH3変化量は正の相関を示した(r=0.524, P<0.05)。一方、血清中のTNF-α、IL-6、IFN-γ、IL-10は治療前後で有意な変化を認めなかった。腸内細菌叢解析では、多様性、および門、綱、目レベルでの組成においてはRfx投与よる変化を認めなかったが、Veillonella, Streptococcus属においてRfx投与後で減少を認めていた。さらに新たなバイオマーカーの探索に関しても新規視点からの大きな成果を得た。慢性肝疾患患者のVWFやADAMTS13の発現変化を解析し、それらが肝発癌予測および肝癌早期診断のバイオマーカーに成り得るか検討した。その結果、血中VWF抗原量およびVWF/ADAMTS13比は、既存のAFPなどの肝癌マーカーに比して各々肝発癌予測および肝癌早期診断に有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
腸内細菌制御研究においても、最近臨床で使用可能となった難吸収性抗生剤であるリファキシミンを用いて、昨年度に実験的肝線維症を腸内細菌バランス調整により抑制し得ることを確認したが、本年度は臨床的な腸内細菌叢変化とエンドトキシン、腸管透過性の関連について成果を得た。またADAMTS-13を始めとして新規の病態予測マーカーの可能性を見いだした。これらの成果より当初の30年度における研究目標をほぼ達成していると考える。
今年度の研究により、腸内細菌制御に関しては、基礎的検討に加え、臨床症例においても同様の検討を加えて、腸内細菌制御と内因性エンドトキシンとの関連について難吸収性抗生剤投与前後で次世代シークエンサーなどを用いて解析した。さらに来年度は、ラクツロース・マンニトール試験を行い、患者症例における腸管透過性の変化についても検討を加え、リーキーガット制御が肝疾患進展抑制に繋がることを明らかにすると共に機序に関してもより詳細に進める予定である。これらの継続的研究により本研究の目的である様々なアプローチによる肝線維化抑制治療法の開発に向けた、より最終目標である臨床応用を見据えた基礎的・臨床的データが得られるものと考える。
試薬支払時期のため。すべて次年度に使用予定。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
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