研究課題/領域番号 |
17K09442
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
中出 幸臣 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (70431400)
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研究分担者 |
角田 圭雄 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10636971)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NAFLD / 迷走神経 / 高脂肪食 / 肝脂質代謝 / CD36 |
研究実績の概要 |
OLETFラットを用いて迷走神経肝臓枝切断術実験を行ったが肝脂肪化にコントロールとの間に有意差を認めなかったため、本年はマウスモデルに変更し実験を行った。6週齢雄性BALB/Cマウスに、迷走神経肝臓枝切断術およびsham手術を実験開始1週間前に行い、その後高脂肪食(High Fat Diet 32: HFD32)および対照食を自由摂食させ実験食開始後18週目まで継続した。その後安楽死させ肝および血液を採取し、肝脂肪化、炎症に関して病理学的に評価した。Sham手術群はHFD32によって著明に体重が増加した。一方迷走神経肝臓枝切断術群では普通食に比べHFD32群において体重増加は顕著ではなかった。Sham手術群の精巣上体脂肪はHFD32により著明に増加したが、迷走神経肝臓枝切断術群では普通食に比べHFD32群において精巣上体脂肪の増加は顕著ではなかった。脂質に関しては、血清中性脂肪(TG)および遊離脂肪酸(FFA)はSham手術群においてはHFD32により顕著な変化がなかったが、迷走神経肝臓枝切断術群においては、HFD32により増加傾向を示した。一方、肝組織に関してSham手術群においてHFD32により顕著に肝脂肪が増加したが、迷走神経肝臓枝切断術群においては肝脂肪化に有意差を認めなかった。肝脂質代謝の関連遺伝子発現について検討したところ、de novo脂質合成に関わるSREBP1 mRNA、肝β酸化に関わるPPARαおよびCPT1mRNAの発現は、迷走神経肝臓枝切断術群およびsham手術群の間で特に著変なかった。また肝脂質排出に関わるMTTP mRNAの発現も各群間で有意差を認めなかった。一方、肝脂質取り込みに関わるCD36 mRNA発現はSham手術群においてはHFD32により著明な発現増加を認めたが、選択的迷走神経肝臓枝切断術群では有意差がなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたOLETFラットに対する選択的迷走神経肝臓枝切断術をおこなった群とコントロール群の間に有意差がみられなかったため、新たにマウスによる実験を開始した。昨年度計画では、迷走神経の関与を証明した後に、迷走神経の神経伝達の中でいかなる経路を経由しているか(中枢神経も含めて)を探索する予定であったが、現在までにマウスの実験系の確立に時間を要した。OLETFラットを用いた実験は12週間であったが、さらにそれよりも長い18週間の時間をモデルには必要とした。このため、当初の実験予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は迷走神経が延髄内に投射している背側核に存在するN-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体に対する拮抗剤を用いて、選択的迷走神経肝臓枝切断術をおこなった群とコントロール群の間に差が認められるかを検討していく予定である、さらには迷走神経には遠心路と求心路が存在するが、求心路だけを除く除神経処置(ペリベーガルカプサイシネーション)を行い、コントロール群との間に差が認められるかを確認していく。現在は上記の検討を追加している最中であり、本年度はさらに研究を加速していくため、実験時間の確保さらには助手の補充などを行い、スピードアップを図って行く予定である。そして、本年度計画で予定していた、迷走神経のシグナルをupregulateすることがNAFLDにどのように影響を及ぼすかを検討する。マウスの頸部頸部迷走神経にbipolar cuff electrodeを用いて迷走神経の電気刺激をおこない、血清肝酵素および炎症性サイトカインの発現について、経時的に評価を行っていく。また最終的には18週後に脂肪肝が改善しているか、組織学的に検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用予定であった、NMDA受容体拮抗剤とそれを投与する際に必要である脳室内カテーテルを本年度へ使用を変更したため、これらを次年度使用予定である。
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