研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis; NASH)は、生活習慣の欧米化にともない本邦でも慢性肝疾患の主な成因となっているだけでなく、患者数が急増している非B非C肝癌の主な成因としても注目されている。過食とともに、活動量の低下はNASHの主な原因であり、運動療法によりNASHが改善することは広く認知されている。近年、骨格筋は運動器としてだけでなく、内分泌臓器であることが明らかとなった。これまでに約30種類の筋細胞由来のホルモンであるマイオカインが同定されており、造骨作用、抗炎症作用、認知能の改善作用などがあることが報告されている。また、マイオカインの中にはインスリン抵抗性改善作用や、細胞増殖抑制作用を有するものも報告されている。本研究の目的は、運動誘発性マイオカインが、NASHおよび肝発癌におよぼす影響をマウスモデルを用いて検討することである。昨年度、我々はNASHモデルマウスを作成し、マイオカインの一種であるdecorinの血中濃度がコントロール群と比較して有意に低値であることが明らかにした。本年度は、肝動脈化学塞栓術にて治療された肝癌患者を対象として筋肉量を検討した(n=39, 年齢 75 [69-78]歳, 性別 男性/女性 20/19, BMI 22.1 [220.5-24.6], Child-Pugh score 6 [5-8])。その結果、治療後の骨格筋量に有意な減少が認められることを明らかにした。また、今回の検討で、加齢と肝予備能は骨格筋量と有意な相関を認めなかったが、irisinとdecorinは骨格筋減少群で非減少群と比較し有意に低値であることを明らにした。さらに、決定木解析により血清decorin値 < 10226.8 pg/mL未満が骨格筋量減少に最も関わる因子であることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
複数のマイオカインを検討し、肝癌患者の筋肉量と相関するマイオカインを同定し得た。
マイオカインが肝細胞の糖・脂質代謝異常におよぼす影響や肝発癌に対する抑制効果を培養細胞およびモデル動物を用いて分子生物学的手法により検討する。
解析の結果が当初予想していた結果と異なったため、計画を変更しdecorinの解析を行うこととした。そのため、未使用額が生じた。次年度はdecorinが肝細胞の糖・脂質代謝異常におよぼす影響や肝発癌に対する抑制効果を培養細胞を用いて検討する。
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Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle Rapid Communications
巻: 1 ページ: e00068
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle ‐ Clinical Reports
巻: 3 ページ: e00066