研究課題/領域番号 |
17K09445
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古賀 浩徳 久留米大学, 医学部, 教授 (90268855)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | TCF-4 / CLAUDIN-2 / HES1 / Sphere |
研究実績の概要 |
まず、「CLAUDIN-2/HES1発現がTCF-4 isoformに内在する「SxxSS」モチーフ依存性か否かの検証」をおこなった.すなわち,HAK-1A肝癌細胞株をベースに,empty vector (EV),TCF-4J(SxxSSなし),TCF-4K(SxxSSあり),K-mutant 269A(AxxSS),K-mutant 272A(SxxAS),K-mutant 273A(SxxSA)のそれぞれを過剰発現させた細胞株を作成し,接着および浮遊(sphere)条件下で培養しサンプルを作成した後,Real-time PCRとWestern blotにより,CLAUDIN-2およびHES1の mRNAと蛋白の発現レベルを検討した.その結果,TCF-4Jのsphereでほぼ特異的に見られたCLAUDIN-2,HES1の発現増強は,TCF-4K-mutant 273Aで再現(ミミック)された.したがって,とりわけHES1発現制御機能はTCF-4におけるSxxSSモチーフの欠損あるいはSer273のリン酸化によって制御されている可能性が示唆された.発現した蛋白の局在については,確かに細胞膜(CLAUDIN-2)や核(HES1)にあることを共焦点レーザー顕微鏡で確認した.次に,CLAUDIN-2ノックダウンや過剰発現によるcancer sphere形成とHES1発現制御の解析をおこなった.その結果,CLAUDIN-2発現低下によってcancer sphere形成能の著しい低下を認めたが,HES1の低下は見られなかった.Hep3BおよびHLFベースのCLAUDIN-2過剰発現細胞株によるHES1発現制御の解析をおこなったが,大きな変化は見られなかった.したがって,本実験系においては,Wnt/TCF-4系によるHES1やCLAUDIN-2発現調節能がわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①CLAUDIN-2/HES1発現がTCF-4 isoformに内在する「SxxSS」モチーフ依存性か否かの検証.②CLAUDIN-2ノックダウンや過剰発現によるcancer sphere形成とHES1発現制御の解析.を平成29年度におこなう実験計画として挙げていたが,これらはほぼ遂行できた.ただ,CLAUDIN-2とHES1シグナルの交差点として予想していた「CLAUDIN-2とJAGGED1会合」については,免疫沈降およびプロテオミクス解析の結果,陽性所見が得られなかった.代わりに,CLAUDIN-2過剰発現HLF細胞株における予想外の増殖抑制所見が得られており,その機序解明において新たな発見が生まれつつある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,計画通りCLAUDIN-2ノックダウン細胞株や過剰発現細胞株を用いて免疫不全マウスにおける造腫瘍能を検討している.その他,概ね計画通りに研究を遂行する予定であるが,前述のように,CLAUDIN-2過剰発現HLF細胞株における予想外の増殖抑制所見が得られており,その機序解明において単に細胞周期の解析にとどまらず,autophagyの関与など新たな側面からCLAUDIN-2の新機能がわかりつつあり,その解明にも注力していきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予想以上に試薬類の使用を節約できたことで平成29年度は物品費を抑制することができた.しかし一方で,鍵となる実験系である網羅的解析(マイクロアレイ)への支出など,「その他」への支出が増加した.これは予想外の好ましいデータが出たことへの対応である.
|