研究実績の概要 |
平成29年度、「Wnt/TCF-4系によるHES1/CLAUDIN-2発現調節能」の一端を明らかにした。すなわち、Wntシグナル経路の重要な転写因子であるTCF-4のisoform Jとisoform K-mutant 273AがHES1発現増強に関係していることを明らかにした。このことは、Notchシグナル経路がWntシグナル経路と密接に関係していることを示唆している。 平成30年度は、Wntシグナルの直接制御下にあるCLAUDIN-2(膜局在)からHES1(核局在)へ、あるいは逆にHES1からCLAUDIN-2へのシグナルリレーを明らかにすることを目的とした。とくにCLAUDIN-2/HES1系が肝癌細胞のsphere形成能と正に相関することから、種々の癌幹細胞関連分子(EpCAM, CD90, CD13, CD133, NANOG, OCT4, SOX2)の挙動も併せて検討した。その結果、CLAUDIN-2ノックダウンによってcancer sphere形成能(造腫瘍能)およびNANOG発現の著しい低下を認めたが、HES1の低下は見られなかった。一方、CRISPRシステムによるHES1のノックアウト状況下では、cancer sphere形成能(造腫瘍能)およびNANOG発現の著しい低下とともに、著明なCLAUDIN-2発現低下も観察された。これらのことから、肝癌細胞や混合型肝癌細胞の細胞間接着因子であるCLAUDIN-2はWntシグナルおよびNOTCH/HES1シグナルの両方から制御されていることが示唆された。また、HES1は肝癌細胞においてsphere形成能や造腫瘍能、さらに癌幹細胞関連分子の発現に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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