研究課題
本研究では,Wnt-Notchシグナルcrosstalkを,HES1発現制御に焦点を当てて解析していった.まず,「SxxSSモチーフ」欠失型TCF-4 isoform JによってCLAUDIN-2 (CLDN2)の発現亢進が惹起される所見を起点とした.「SxxSSモチーフ」を有するK型mutantsを過剰発現させた肝癌細胞株を作成し,接着および浮遊(sphere)条件下でのCLDN2およびHES1のmRNAと蛋白の発現レベルを検討した.その結果,TCF-4Jのsphereでほぼ特異的に見られたCLDN2,HES1発現増強は,TCF-4K-mutant 273Aで再現された.したがって,とりわけHES1発現制御機能はTCF-4におけるSxxSSモチーフの欠損あるいはSer273のリン酸化によって制御されている可能性が示唆された.次にCLDN2がHES1発現のeffectorであるかを確認するため,CLDN2をノックダウンしてsphere形成能や種々のCSC関連分子の挙動を検討したところ,sphere形成・造腫瘍能およびNANOG発現の著しい低下を認めたものの,HES1の低下は見られなかった.したがって,HES1は,特異なTCF-4 isoformによって制御されてはいるが,それは細胞膜上における分子間相互作用を経由する核へのシグナルリレーに依存するのではなく,核内での相互作用によるものである可能性が示唆された.これは,予備実験で得られていたCLDN2/JAGGED-1の直接的会合が,Wnt系からのシグナルをNotch系へと伝えるほど機能的には強くなかった所見からも伺えた.ヒト肝細胞癌組織におけるCLDN2の発現は,偽胆管様構造の部位に強く認められたが,通常の索状構造の部位では非癌部に比し増強は見られなかった.上記のシグナル系は胆管細胞癌において機能している可能性が示唆された.
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