研究課題
これまでに、原発性胆汁性胆管炎(PBC)の黄疸・肝不全進行関連遺伝子として同定したカテプシンZ(CTSZ)が、PBC黄疸・肝不全進行患者の血中・肝組織で増加すること、肝細胞でその局在が毛細胆管側から細胞質内に変化することを明らかにした。今回、血中・肝組織におけるCTSZの増加と肝細胞におけるCTSZの局在変化が、PBC特異的な臨床像か否か明らかにする為に、他の肝疾患におけるCTSZの発現・局在を解析した。さらに、他のカテプシンファミリーがPBC黄疸・肝不全進行患者の進行に関与しているか否かを明らかにする為に、PBCと他の肝疾患の血中・肝組織におけるカテプシンB (CTSB)の発現・局在を解析した。他の胆汁鬱滞性肝疾患の血中・肝組織におけるCTSZの発現は、C型慢性肝炎(CHC)患者と比較して顕著に増加していた。他の胆汁鬱滞性肝疾患の肝組織におけるCTSZタンパクは、PBCと同様に肝細胞,単球,マクロファージ,クッパー細胞に高く発現していた。特に、肝細胞のCTSZタンパクは、他の胆汁鬱滞性肝疾患の進行症例で増加し、その局在は毛細胆管側から細胞質内へ変化していた。PBC進行群、閉塞性黄疸患者の血中CTSBは、CHC患者と比較して有意に増加していた。CTSBタンパクは、PBCと他の胆汁鬱滞性肝疾患の肝組織で肝細胞、血管内皮細胞、肝類洞細胞に高く発現していた。PBCと他の胆汁鬱滞性肝疾患の進行において、CTSBタンパクは肝細胞よりも肝類洞細胞に発現が増加していた。これらの結果から、血中・肝組織におけるCTSZとCTSBタンパクの増加と局在変化は、PBCを含めた胆汁鬱滞性肝疾患の重症化症例に共通する現象と考えられた。CTSZとCTSBタンパクは、胆汁鬱滞性肝疾患の進行において発現が増加する細胞が異なることから、胆汁鬱滞性肝疾患の重症化に異なる役割を果たす可能性が示唆された。
4: 遅れている
in vitroにおける、カテプシンZの解析に時間を要している。
今後は、PBC黄疸・肝不全進行患者の肝組織におけるCTSZタンパク増加メカニズムの解析、PBC黄疸・肝不全進行患者の肝細胞におけるCTSZの局在異常メカニズムの解析、PBC黄疸・肝不全進行おける肝細胞死、肝炎症反応に対するCTSZの関与の検討を行う予定である。
実験の進捗状況が遅れているために、今年度内に使用できなかった。次年度で、in vitroにおけるカテプシンZの解析に使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 8071
10.1038/s41598-018-26369-6