研究課題
膵癌の発症年齢中央値は70歳台前半であるが、30~40歳台の若年発症を稀に見る。これらの患者の一部に濃厚な膵癌家族歴を有する例、また背景膵に小嚢胞を認める例が散見され、高い遺伝的素因を有すると考えられる。これまでに、BRCA1/2, CDKN2A, STK11など、複数の膵癌感受性遺伝子が同定されており、このようなゲノム異常の全貌を明らかにすることは、膵発癌の高危険群を特定する重要な情報と考えられる。本研究では、膵癌発症の予測に役立つ新規の感受性遺伝子(群)の特定を目的に、米国マサチューセッツ総合病院消化器科と共同で、50歳未満で発症した膵癌(膵内分泌腫瘍を除く)患者を対象に、日本人52名、米国人38名からなる生殖細胞系列の全エクソーム解析を行った(UMIN000016984)。その結果、日本人膵癌に特有な感受性遺伝子を3つ同定した(論文投稿準備中)。さらに、cBioPortalに公開されているUT Southwestern Medical Centerにおける109例の膵癌体細胞変異情報(Witkiewicz AK, Nat Commun 2015)を用いた再解析により、50歳未満の若年発症例で、有意に多いコピー数異常候補遺伝子を特定した(論文投稿準備中)。上記日本人コホートのうち、外科切除を行い腫瘍/正常組織ペアの解析が可能であった14症例と、70歳以上での発症例とを比較した結果、このコピー数変異は、若年発症群に有意に多く検出された。このような自験例、及び既存データベースから得られるゲノム情報を背景に、膵癌発症の高危険群を絞り込むためのアルゴリズムを構築すべく、今後も研究を継続する予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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