研究課題
代表者高原は、標準治療に抵抗性となった膵癌に対する腹腔内化学療法や新規化学療法regimen の開発に携わるとともに、遺伝子多型SNPや腫瘍マーカーを用いた治療効果予測の有用性を報告してきた。分担者は患者腫瘍からヒト膵癌異種移植腫瘍(patient-derived tumorxenograft; PDX)ライブラリーを樹立、基礎的検討を行ってきたが、患者由来膵癌の3次元培養法(Patient-derived organoid; PDO)によりさらに詳細なin vitro 研究や大規模なスクリーニングが可能となった。そこで、本研究では①膵癌PDO を用いて抗癌剤への感受性を評価し、これが由来する患者における実際の治療反応性とどの程度相関するかを検証する。②治療感受性の異なるPDO を用いて治療効果予測因子の同定・バイオマーカー探索を図る。③治療抵抗性症PDOを用い、化学療法への耐性を改善する低分子化合物の探索とその機序の解明を行う。初年度は膵癌PDOを用いて膵癌の標準治療に用いられているGemcitabine、5-FUなど感受性について得られた結果と実際に投与された薬剤に対する臨床応答との関連を検討している。膵癌症例からのPDOの目標数10ラインはすでにクリアしており、これまでの検討では個々のPDOごとに薬剤に対する感受性の違いが認められている。よって本解析結果によりPDOを用いた薬剤感受性評価が実際に臨床効果をどの程度予測可能かのPredictive powerを明らかにする。今後は感受性・抵抗性に関わる因子・バイオマーカー候補を探索するために、IC50 値にもとづき、PDO を感受性と抵抗性に分類し、両群間での遺伝子変異プロファイルの違いを評価するとともに、抗癌剤暴露によって変動する遺伝子の違いについても、同様に感受性・抵抗性PDO 群で比較し、治療効果を早期に予測するためのマーカーも探索する。同定された治療抵抗性と関連する因子については、siRNAによる遺伝子発現抑制によって抗癌剤への感受性改善効果が得られるかどうか検討する。
2: おおむね順調に進展している
初年度は膵癌PDOを用いて膵癌の標準治療に用いられているGemcitabine、5-FUなど感受性について得られた結果と実際に投与された薬剤に対する臨床応答との関連を検討している。膵癌症例からのPDOの目標数10ラインはすでにクリアしており、これまでの検討では個々のPDOごとに薬剤に対する感受性の違いが認められている。よって本解析結果によりPDOを用いた薬剤感受性評価が実際に臨床効果をどの程度予測可能かのPredictive powerを明らかにすることが可能である。
抗癌剤に対する感受性・抵抗性に関わる因子・バイオマーカー候補を探索するために、IC50 値にもとづき、PDO を感受性と抵抗性に分類し、両群間での遺伝子変異プロファイルの違いを評価するとともに、遺伝子発現プロファイルについてもマイクロアレイ解析により網羅的に比較する。また、抗癌剤暴露によって変動する遺伝子の違いについても、同様に感受性・抵抗性PDO 群で比較し、治療効果を早期に予測するためのマーカーも探索する。ここで得られた候補に関して、実際の治療導入前の患者腫瘍サンプルや、治療開始前後の保存血清を用いて、その有用性を検証する。さらに、ここで同定された治療抵抗性と関連する因子については、siRNAによる遺伝子発現抑制によって抗癌剤への感受性改善効果が得られるかどうか、すなわち抵抗性に機能的に寄与するかどうかも検討する。
個々のPDOクローンの網羅的発現解析について、全サンプルについて一括解析を行うため、全クローンのサンプル抽出を待つ必要があった。これにより発現解析費用の約500,000円についての使用が次年度にずれ込んでいるが予定通り使用予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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