研究課題/領域番号 |
17K09455
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂野 大介 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40571039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / GPCR / インスリン / 糖尿病 / iPS / 分化 / 脱分化 |
研究実績の概要 |
これまでにマウス膵島を使った膵臓β細胞の脱分化抑制もしくは成熟化促進効果を持つ化合物候補を得ている。本年度はその中からヒトiPS細胞の膵臓β細胞への分化過程において同様の効果を示す効果を持つものをさらに選抜し、過去の研究で我々が明らかにしているDRD2とは異なる1種類のGPCRを新たに同定した。 さらに同受容体がヒトおよびマウスの膵臓β細胞に局在することを免疫組織学的手法により明らかにした。 現在は、過去の研究報告において当該GPCRとヘテロ2量体を形成することが知られている他のGPCRについて、アゴニストおよびアンタゴニストを用いて、マウス膵島とヒトiPS細胞由来の膵臓β細胞への脱分化抑制もしくは成熟化促進効果について検討しているところである。 また、膵臓β細胞の機能評価として従来一般的に用いられている培地の糖濃度を変化させ、倍地中に放出されたインスリン量をELISA法により定量すること以外に本研究課題において全反射照明蛍光顕微鏡(TIRFM)で観察する実験系を構築し、マウスおよびヒト膵島細胞のみならず、ヒトiPS細胞由来の膵臓β細胞のインスリン分泌現象を可視化することに成功した。 これらの結果により、インスリン分泌をより時間解像度を高くとらえることが可能となり、今後ヒトiPS細胞を用いた膵臓β細胞移植方法の改良が見込めると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度以降に予定していたTIRFMによるインスリン分泌のイメージング実験を予定より早く実用するに至った。 化合物スクリーニングで得られたヒット化合物の効果を当初はマウス膵島で検討する予定をしていた。しかし、所属研究室にてヒトiPS細胞からの膵β細胞分化研究が安定的に進められていることから既にこれらの細胞に対してヒット化合物の効果を解析しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞から膵β細胞を分化させる過程で本課題において明らかにしたヒット化合物を用い作り出されるヒトiPS細胞由来β細胞の機能改善効果について解析を進める。 さらに糖尿病も出るマウスへのヒトiPS細胞由来β細胞移植後の血糖改善効果に影響があるかについてもあわせて検討したい。さらにヒット化合物の作用メカニズムをGPCRの会合状態の変化の観点から解析をすすめているところであり、これを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたよりも化合物スクリーニングに要する時間と費用が節約できた。さらにヒトiPS細胞由来の細胞を用いたヒット化合物の効果が得られたために、新たな化合物ライブラリーのスクリーニングを展開するよりも既に得られた化合物の効果を検証することを優先した。これらの結果から予算の使用額に差異が生じた。 本年度以降のGPCR動態に関する研究には、特異性が高い抗体が必要となることや、ヒット化合物標的となるGPCRと相互作用するGPCRの解析に差額分の予算を割り当て、研究の進行を早められればと考えている。
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