研究実績の概要 |
膵癌は極めて予後不良な悪性腫瘍であり、その要因として早期診断が極めて困難であることが挙げられる。一方、近年の分子生物学の進歩により癌に特異的に発現するmiRNAが種々の癌で見出されつつあるが、膵癌では未だ不明の点が多く、現在までmiRNAを用いた膵癌の早期診断についてはほとんど報告されていない。 本研究では、膵癌症例から内視鏡的に採取した膵癌組織、膵液,胆汁などの臨床サンプルを用いて、主に癌抑制型miRNAにおけるメチル化によるサイレンシングに関する検討を行い、早期膵癌においてメチル化されている癌抑制型miRNAを同定することにより、膵癌早期診断マーカーを確立することを目的とした。 まず、胆汁における癌抑制型miRNAのメチル化に関する検討を行った。当科にて内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) 時に胆汁を採取した膵癌26例、胆道癌10例、良性膵胆道疾患9例を対象とした。各サンプルからDNAを抽出し、癌抑制型miRNAと報告されている16のmiRNAにおいて次世代シーケンサーを用いてメチル化の解析を行った。 16のmiRNAのうち、8つのmiRNA (MiR30a3p, 34a, 34bc, 96, 126, 141, 200a, 200bc) では疾患間でメチル化率に差がみられたため、さらなる解析を行った。MiR30a3p, 34a, 34bc, 96において、胆道癌が膵癌、良性膵胆道疾患と比較して有意にメチル化されている部位がみられた。一方、膵癌においては、他の疾患と比較して有意にメチル化されている部位は認められなかった。 膵胆道疾患における胆汁での癌抑制型miRNAのメチル化によるサイレンシングに関する検討では、主に胆道癌において高頻度にメチル化を認め、他の疾患との鑑別に有用である可能性が示唆された。
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