研究実績の概要 |
本研究では、膵癌症例から内視鏡的に採取した膵癌組織、膵液,胆汁などの臨床サンプルを用いて、主に癌抑制型miRNAにおけるメチル化によるサイレンシングに関する検討を行い、早期膵癌においてメチル化されている癌抑制型miRNAを同定することにより、膵癌早期診断マーカーを確立することを目的とした。 まず、胆汁を用いた検討を行った。当科にて内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) あるいは経皮経肝胆道ドレナージ (PTBD) 時に胆汁を採取した膵癌53例、胆道癌25例、良性膵胆道疾患20例、計98例を対象とした。胆汁からDNAを抽出し、sodium bisulfite処理後、癌抑制型miRNAと報告されている16個のmiRNA (miR-26a1, 29c, 30d, 31, 34bc, 96, 126, 130b, 145, 192, 200a, 200b, 345, 615-5p, 1247, 1254-1) においてPCRを施行し、次世代シーケンサーを用いてメチル化の頻度を定量的に解析した。 16個のmiRNAのうち、miR-1247, miR-200aでは膵癌、胆道癌において良性膵胆道疾患と比較して、miR-200bでは膵癌において良性膵胆道疾患と比較してメチル化が有意に多く認められた。一方、miR-126では良性膵胆道疾患において膵癌、胆道癌と比較してメチル化が有意に多く認められたが、他のmiRNAでは有意差は認められなかった。 膵胆道疾患における胆汁中癌抑制型miRNAのメチル化の検討において、膵癌、胆道癌では良性膵胆道疾患と比較してmiR-1247, 200a, 200bのメチル化を有意に高率に認め、膵胆道疾患における良悪性の鑑別に有用なマーカーになる可能性が示唆された。
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