本研究では原発性胆汁性胆管炎(PBC)肝内胆管細胞のS1PR2の発現や機能を検討し疾患特異性から病態解明まで行い、さらに新規治療を創出することが目標である。 in vitroで、Human intrahepatic cholangiocarcinoma cell lineであるHuCC-T1 cellsを用いて、肝内胆管細胞へのLPS刺激によるT細胞の遊走能に及ぼす影響について、CX3CL1とCCL2の発現を中心にS1PR2 antagonist JTEが及ぼす作用について検討した。2019年度に引き続き、LPS刺激によるHuCC-T1 cells中のCX3CL1、CCL2の上昇を抑制するメカニズムについて検討した。まず初めに焦点を当てたNFkBを介さないことを確認にしたので、次にSTAT3に着目した。HuCCT-1の核内のリン酸化STAT-3の発現をWestern Blotで確認した。JTEを投与する事でHuCCT-1の核内のリン酸化STAT-3の発現は行進し、LPSと共にJTEを投与しても同様にリン酸化STAT-1の発現が行進していた。従って、JTEはNFkBを介さず、STAT-3をリン酸化することでLPSにより発現が上昇したCX3CL1とCCL2の発現を抑制していることが示唆された。また、2019年度と同様にHuCC-T1 cellsとヒトT cell lymphomaのcell lineであるJurkat cellsを用いてChemotaxis assayを行った。HuCCT-1のLPS刺激によりケモカイン産生が行進され、Jurkat cellsの遊走能が優位に上昇するが、LPS+JTEにて上昇していた遊走能は優位に低下した。以上より、JTEが肝内胆管細胞のLPS誘導CX3CL1とCCL2産生をSTAT-3のリン酸化を介して抑制し、T 細胞の遊走を低下させることが解明された。
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