研究課題
本研究は下記2テーマについて膵癌自然発症マウスとヒト膵癌培養細胞株を用いて解析することを主眼としている。A: 膵癌マウスにおける骨髄由来腫瘍関連(筋)線維芽細胞およびCox-1, -2遺伝子の役割を明らかにする。B: ヒト膵癌幹細胞におけるCOX-1, -2遺伝子の機能を解析する。A:初年度に入手した遺伝子改変マウスを用いて以下の交配を行った。a) 膵臓特異的Cre発現マウス(Ptf1a-Cre) b) 条件的変異型K-rasG12D発現マウス(LSL-KrasG12D) c) 条件的p53ノックアウトマウス(p53 flox) d) 条件的Cox-1ノックアウトマウス(Cox-1 flox) e) 条件的Cox-2ノックアウトマウス(Cox-2 flox)。これらマウスのstrainは、a) b) c) d) はいずれも純粋なC57BL/6(B6と略)であるが、e)はB6と129Svの混合種でB6と2回戻し交配(B6F2)されており、研究に使用するにはあと4回のB6との交配が必要であった。交配状況:1: a) x b) x c): KPCマウス: p53がhetero:flox/-ではKPC+/-, homoではKPC-/-と略記。現在KPC+/-, -/-の両方を繁殖中。2: a) x b) x c) x d): KPCマウス+/-にd) を交配中。3: e) に関しては、1、2とのstrainを一致させるためにB6との戻し交配を継続中で、現在はB6F5なので残り1回の交配で終了予定。B:初年度に入手したヒト膵癌培養細胞株22種類のうち、Sphere Formation Assayおよび免疫不全マウスへの皮下移植によるXenograft Assayにより、4種類の培養細胞株が癌幹細胞分画を含有しており研究材料として適していると判断した。
3: やや遅れている
前述の、「研究実績の概要」にも記したとおり、本研究は2つのテーマからなり、各テーマの2018年度の進捗状況は以下のとおりである。A:1) 生後約32週齢のKPC+/-マウス4匹(オスメス2匹づつ)を解剖して腹部臓器を調べたところ、いずれも膵臓に腫瘍を形成していた。腫瘍の病理組織標本(H-E染色)ではほぼ全域に浸潤性膵癌細胞が観察された。KPC-/-マウスに関しては繁殖がやや不良で、現在コロニーを拡大中である。2) KPCマウス+/-とCox-1 floxマウスを交配中であり、KPC+/-Cox-1+/-マウスはほぼ順調に生育している。3: Cox-2 floxマウスはB6との戻し交配を継続中であるが、2018年度ではB6F5が得られたので、あと1回の戻し交配によりほぼ純粋なB6を遺伝的背景にもつCox-2 floxマウスが得られる見込みである。B:ヒト膵癌培養細胞株で癌幹細胞分画を含有する4種類の培養細胞株KLM-1, HPAF2, KMP5, T3M4を用いてCOX-1, -2遺伝子の発現を定量的RT-PCR法にて解析したところ、COX-1の発現はいずれの細胞でも低かったが、COX-2はKLM-1とHPAF2において中等度に発現していた。加えて、KLM-1とHPAF2の2次元接着培養と3次元スフィア培養でのCOX-2の発現を各々比較したところ、どちらの細胞でもスフィア培養でのCOX-2の発現が、接着培養における発現よりも数倍上昇していた。
各テーマの今後の研究計画・推進方策は以下のとおりである。A:1) KPCマウス+/-とCox-1 floxマウスの交配を継続し、KPC+/-Cox-1+/-に加えてKPC+/-Cox-1-/-の作成と表現型の解析を実施する。また、KPC-/-マウスにおける膵発癌の確認、およびKPC-/-Cox-1+/-などの作成も進めて行く。2)Cox-2 floxマウスのB6との戻し交配を終了し、KPCマウス+/-とCox-2 floxマウスの交配を開始する。当面はKPC+/-Cox-2+/-の作成を主眼とするが、さらにKPC+/-Cox-2-/-などの作成も進めて行く。B:COX-2遺伝子が発現している培養細胞KLM-1とHPAF2を用いて、shRNAによるCOX-2遺伝子をノックダウンした細胞株を作成し、細胞表面マーカーの解析や、Sphere Formation Assayと免疫不全マウスへの皮下移植によるXenograft Assayにより癌幹細胞分画の変化の有無を検証する予定である。さらに膵癌手術検体から樹立したスフェロイド試料を用いて、COX-1, -2遺伝子の発現状況を定量的RT-PCR法やウエスタンブロット法などで解析することも検討する。
前述の「今後の研究の推進方策」にも記したとおり、2つのテーマそれぞれにおいて研究計画を立てており、それらの計画遂行のために2018年度の研究費の一部を使用する予定である。A:1) KPCマウス+/-とCox-1 floxマウスの交配を継続し、KPC+/-Cox-1+/-に加えてKPC+/-Cox-1-/-の作成と表現型の解析を実施する。また、KPC-/-マウスにおける膵発癌の確認、およびKPC-/-Cox-1+/-などの作成も進めて行く。2)Cox-2 floxマウスのB6との戻し交配を終了し、KPCマウス+/-とCox-2 floxマウスの交配を開始する。当面はKPC+/-Cox-2+/-の作成を主眼とするが、さらにKPC+/-Cox-2-/-などの作成も進めて行く。B:COX-2遺伝子が発現している培養細胞KLM-1とHPAF2を用いて、shRNAによるCOX-2遺伝子をノックダウンした細胞株を作成し、細胞表面マーカーの解析や、Sphere Formation Assayと免疫不全マウスへの皮下移植によXenograft Assayにより癌幹細胞分画の変化の有無を検証する予定である。さらに膵癌手術検体から樹立したスフェロイド試料を用いて、COX-1, -2遺伝子の発現状況を定量的RT-PCR法やウエスタンブロット法などで解析することも検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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