研究課題/領域番号 |
17K09463
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
谷内 恵介 高知大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50626869)
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研究分担者 |
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (40380323)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵癌 / RNA干渉 / デリバリーシステム / 浸潤転移 |
研究実績の概要 |
予後不良である膵癌に対する手術以外の治療法は、最近エルロチニブや多剤併用抗癌剤療法が認可されたが、重篤な副作用が高頻度に出現し、理想的な治療法からは程遠い状況である。膵癌細胞に形成された葉状仮足(Lamellipodia)に運ばれる特定のメッセンジャーRNA (mRNA)が葉状仮足において局所翻訳されることにより、浸潤・転移が亢進する新しい機序を明らかにした。この機序に関わる19種類のmRNAを次世代シークエンサーにより網羅的に同定した。19種類のmRNAの葉状仮足における局所翻訳を抑制することができれば、膵癌細胞の浸潤を減少させ、遠隔転移を防ぐ可能性がある。本研究では、(1)膵癌細胞の浸潤・転移に関わっている19種類のmRNAを標的とするRNA干渉の一つであるsmall interfering RNA(siRNA)の同定、(2) 経静脈的に投与されたsiRNAを膵癌細胞まで効率よく輸送するために、膵癌細胞膜上に高発現している葉酸レセプターに結合する葉酸ナノ粒子を用いたsiRNAデリバリーシステムの開発を目的とする。それぞれのmRNAに対するsiRNAを合成し、葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子を付加した。細胞実験にてノックダウン効果を確認し、ヒト膵癌細胞株を膵臓に移植されたヌードマウスにそれぞれの葉酸ナノ粒子付加siRNAを1回/週の頻度で尾静脈へ静注投与した。4種類のmRNAに対するsiRNAが、後腹膜浸潤と肺・肝臓への転移を強力に抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に実施予定の④「マウスを用いた葉酸ナノ粒子付加siRNA の浸潤・転移抑制効果の検討」までを既に終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
①マウスを用いた葉酸ナノ粒子付加siRNA の毒性試験(担当;谷内、八幡): 10週齢マウスから全血採取する。血清を除去し、血球をPBSで希釈する。葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子を付加したスクランブルコントロールsiRNAをそれぞれPBSで希釈したマウス血球に添加し、37℃で1時間インキュベートする。OD測定を行い、赤血球溶血の有無を検討する。 次に、6週齢ヌードマウスを用いた毒性試験を行う。葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子を付加したスクランブルコントロールsiRNAの経静脈投与を1回/週の頻度で6週間行った後、全マウスから全血採取する。血清を外注検査(和光)に提出する。肝・腎・膵機能検査を行い、PBSのみを投与したコントロール群と比較を行い、肝・腎・膵に機能異常が生じていないかを検討する。さらに、全血採取後にマウス重要臓器(脳・肺・肝臓・膵臓・腎臓・骨髄)を摘出し、ホルマリン固定する。ヘマトキシリン&エオジン染色を行い、組織標本を作成する。重要臓器に病理組織学的に異常がないかを調べる。 ② 膵癌浸潤・転移抑制効果の強い複数のsiRNAのカクテル化を行う(担当;谷内、八幡):マウス実験において浸潤転移抑制効果を認めたsiRNAに対し、葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子による修飾を行い、カクテル化する。ヒト膵癌浸潤・転移モデルマウスに投与する。マウス膵臓に移植したヒト膵癌組織からの後腹膜浸潤および肺・肝への転移が単独投与に比較して抑制効果が増強するかを検討する。抑制効果の強い上位のsiRNAを組み合わせてカクテル化を行い、最強の膵癌細胞浸潤・転移抑制効果のあるsiRNAの組み合わせを決定する。
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