研究課題
膵癌細胞に形成された葉状仮足(Lamellipodia)に運ばれる特定のメッセンジャーRNA (mRNA)が葉状仮足において局所翻訳されることにより、浸潤・転移が亢進する新しい機序を明らかにした。この機序に関わる19種類のmRNAを次世代シークエンサーにより網羅的に同定した。19種類のmRNAの葉状仮足における局所翻訳を抑制することができれば、膵癌細胞の浸潤を減少させ、遠隔転移を防ぐ可能性がある。本研究では、(1)膵癌細胞の浸潤・転移に関わっている19種類のmRNAを標的とするRNA干渉の一つであるsmall interfering RNA(siRNA)の同定、(2) 経静脈的に投与されたsiRNAを膵癌細胞まで効率よく輸送するために、膵癌細胞膜上に高発現している葉酸レセプターに結合する葉酸ナノ粒子を用いたsiRNAデリバリーシステムの開発を目的とする。19種類のmRNAを標的とした葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子の付加された各siRNAを膵癌浸潤・転移マウスモデルに静注投与した。その結果、膵癌原発巣からの後腹膜浸潤と肺・肝臓への転移を抑制するsiRNAを同定することができた。
2: おおむね順調に進展している
葉酸ナノ粒子を付加したsiRNAをヒト膵癌浸潤・転移モデルマウスに静脈注射により投与した。葉酸ナノ粒子付加siRNAが、マウス膵臓内に形成された膵癌組織に集積することをインビボイメージングシステムにより確認後、膵癌原発巣からの後腹膜浸潤と肺・肝臓転移を抑制する効果を病理組織学的に評価した。その結果、浸潤・転移抑制効果の強いsiRNA配列を抽出することにより、RNA干渉剤開発の基盤データを得ることができ、順調に研究計画を遂行できている。
マウスを用いた葉酸ナノ粒子付加siRNA の毒性試験を実施する:10週齢マウスから全血採取する。血清を除去し、血球をPBSで希釈する。葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子のみ、および葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子を付加したスクランブルコントロールsiRNAをそれぞれPBSで希釈したマウス血球に添加し、37℃で1時間インキュベートする。用いるナノ粒子の投与量を1mg/mLから10mg/mLの範囲で割り振る。OD測定を行い、赤血球溶血の有無を検討する。次に、6週齢ヌードマウスを用いた毒性試験を行う。葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子のみ、および葉酸-ポリエチレングリコール-陽イオン性ポリマーナノ粒子を付加したスクランブルコントロールsiRNAの経静脈投与を1回/週の頻度で6週間行った後、全マウスから全血採取する。各群5匹にて実施する。血清を分離し、外注検査(和光)に提出する。肝・腎・膵機能検査を行い、PBSのみを投与したコントロール群(ヌードマウス5匹)と比較を行い、肝・腎・膵に機能異常が生じていないかを検討する。さらに、全血採取後にマウス重要臓器(脳・肺・肝臓・膵臓・腎臓・骨髄)を摘出し、ホルマリン固定する。ヘマトキシリン&エオジン染色を行い、組織標本を作成する。重要臓器に病理組織学的に異常がないかを調べる。
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