研究課題/領域番号 |
17K09464
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
村橋 睦了 (伊賀睦了) 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20422420)
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研究分担者 |
大西 秀哉 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30553276)
岸 裕幸 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60186210)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / がん免疫治療 / 線維化 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
まず、in vitro実験により、線維化抑制ペプチドであるPatched1結合ペプチドが癌関連線維芽細胞 cancer-associated fibroblasts (CAFs) と膵癌細胞の増殖と遊走を阻害することを見出した。さらに同ペプチドはCAFsにおける細胞外マトリックスとTGFβ1の産生を減少させ、膵癌細胞のHLA-ABCの発現とリンパ球におけるIFNγ産生を誘導した。上記の膵癌細胞株 AsPC-1 および CAFs を混合し免疫不全マウスに皮下腫瘍を形成させ、ヒトリンパ球、抗 PD-1 抗体を腹腔内に投与、Patched1結合ペプチドを腫瘍局所に投与するマウス動物モデルを作製し、治療による腫瘍の抑制効果 、線維化の程度、癌浸潤CD3+リンパ球数を評価した。 リンパ球輸注にPatched1結合ペプチドおよび抗PD-1抗体投与を併用した群において、有意な腫瘍体積の減少、癌浸潤CD3+Tリンパ球数増加を認め、患者由来標的癌細胞と自己リンパ球を用いた実験においても同様の結果が得られた。これらの結果は、Patched1結合ペプチドの直接的な抗腫瘍効果に加え、膵癌における線維化の減少により免疫細胞のリクルートを増大させ、結果として免疫療法の効果を向上させることを示している。1.膵癌の線維化に注目し、それを克服してがん免疫治療の有効性向上を得ようとする研究は多くあるが、本研究のようにHhシグナルを阻害するペプチドによる試みは初めてである。また、Hhシグナルを阻害して膵癌の線維化を克服しようとする試みは以前からあったが、臨床応用に至ったものはまだない。本研究での結果は今後の発展が期待できるが、ペプチドによる線維化阻害の有効性を向上させるさらなる研究が必要である。 以上の実験結果を論文として報告した(J Immunother. 2020 May;43(4):121-133)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前臨床試験として実施したマウスモデルにおける線維化抑制ペプチドとニボルマブの併用療法の有効性を証明した実験結果の論文作成に並行して、前年度より膵癌オルガノイドを用いた免疫細胞の反応評価系の作成に取り組んできた。しかしながら、研究代表者の東京慈恵会医科大学への異動により、膵癌オルガノイド作成に用いる細胞ソースの変更、それに伴う倫理審査申請等の手続きが必要となり、研究計画を1年延長して同テーマに取り組むことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌オルガノイドの細胞ソースを細胞株に変更して、まず標的の作成を行う。引き続き、エフェクターとして膵癌に高発現する抗原特異的CTLラインとの共培養を行い、免疫反応評価系の確立を目指す。最終的には、ネオアンチゲンによる免疫治療を予定している膵癌患者の生検サンプルよりがんオルガノイドを作製し、ネオアンチゲン刺激後の患者自己PBMCsと共培養を行い、その免疫反応のレベルと治療効果との相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度より膵癌オルガノイドを用いた免疫細胞の反応評価系の作成に取り組んできましたが、研究代表者の東京慈恵会医科大学への異動により、膵癌オルガノイド作成に用いる細胞ソースの変更、それに伴う倫理審査申請等の手続きが必要となり、研究計画を1年延長して同テーマに取り組むことを予定しています。次年度は引き続き新たな環境において膵癌オルガノイド作製の継続に併行して免疫反応評価系の確立を予定しており、当初の予定通り予算額が執行される見込みです。
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