研究課題
膵癌は治療開発が進んでいないアンメットニーズの高い悪性腫瘍であり、新規治療の実現は、医療現場での強い必要性に応えるものである。膵癌の遺伝子異常に反応するTリンパ球の誘導は術後長期生存に貢献するとの報告があり(Balachandran VP, Nature. 2017)、免疫治療の有効性は期待できる。一方で、線維成分を含む特徴的な膵癌組織が免疫細胞のリクルートを阻害している可能性が指摘されており、我々は本研究課題において線維阻害ペプチドを併用した免疫チェックポイント阻害薬による治療モデルにおいてその病態を証明した (Oyama Y, J Immunother. 2020)。この特徴的な病態を擬似した治療効果評価系の開発は、膵癌免疫療法開発を大きく前進させると考えられる。免疫細胞の抗腫瘍効果の評価因子には腫瘍への「遊走」、「浸潤」等が含まれるが、これらの因子は三次元構造体での評価が必要である。昨年度よりこの問題の解決を目指し、独自の細胞スフェロイド作製技術を応用して「膵癌細胞スフェロイドおよび擬似ミニ膵癌」を新たに開発を試みている。これまで膵癌細胞株Panc-1を用いてマイクロウェルシートで培養することによりPanc-1スフェロイドの作製に成功した。Panc-1スフェロイドの直径は300~400 μmであり、スフェロイド中の細胞生存率は、5日間の培養期間中、常に90%以上であった。Panc-1スフェロイドと単層培養Panc-1細胞をドキソルビシン含有培地で48時間培養したところ、スフェロイドは単層培養細胞よりも高い細胞生存率を示し、Panc-1スフェロイドはドキソルビシンに対する薬剤抵抗性を再現できることを明らかにした。これらの研究成果を2021年2月第18回日本臨床腫瘍学会学術集会で報告した。今後この膵癌スフェロイドと膵癌特異的CD8+Tリンパ球を共培養し、その反応を評価していく予定である。
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